■ブリティッシュトラッドを考える上で、ベースとなる哲学
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ブリティッシュトラッド(以後ブリトラ)の波が、今年の秋冬から押し寄せて
きます。来る日に備えて、本ブログでは、私自身の勉強も含めて、ブリトラ
について、いろいろ書かせてもらいました。今回は、ブリトラのベースに
ある、ダンディズムとはなんぞや?ということを学んでいきたいと思います。
教科書は、もちろんブリトラを日本に伝えたお方、いまはなき林勝太郎氏
遺作の数々です。特に上記の2冊は、ブリトラを勉強するのに適してい
ます。時々出てくる詩的な表現も趣があって素晴らしい。必読の本。
ダンディズムとは、流行に左右されず、ある種のこだわりを持って逆らう
行為、と林勝太郎氏は述べています。服装でいうと、ちょっとクラシック
スタイル(定番)のベースにもなっている考えなんじゃないか、と私は
思いました。
少しずつ歴史的な流れも見ながら分解して考えていきたいと思います。
ダンディズムの前進、ダンディが台頭してきたのは、19世紀初頭から
30年くらいの間。はじめダンディとは、英国の上流階級の若者を示す
言葉とし、このグループは服装や美意識、さらに礼儀にいたるまで支配
していたそうです。
ダンディを日本語に訳すと、洒落者、伊達者となりイズムは主義なので
ダンディズムは文学上は「気取り主義」という言葉で表現されることが、
多いそうです。
衣服の「型」にこだわり、「生地」にこだわり、「つくり」に徹底してこだわる
ことだそうです。具体的なファッションでいえば、胸に赤いバラを挿したり
変わった色のチョッキ(ベスト)を着たり、背広は紺かダークグレー、グレー、
に限る。
いつもシルクハットをかぶって散歩したり、パイプのくわえ方に凝ったり
するなど、日常生活、ライフスタイルも含めたファッションということになる
でしょう。ココ・シャネルもこういうファッションスタイルに影響を受け、自分
のブランドを一流メゾンへと昇華させていたったんですね。
しかし、大切なことは見た目だけではなく内面性にいたると述べられて
います。
真のダンディズムとは、文学上においても服装上においても、時勢に対して叛逆精神で立ち向かうことを本質としている。つまり、何かにこだわり、流行に押し流されることなく、頑固に自分の考え方(主義)を貫くことである。ダンディとは単なる洒落者や伊達者のみならず、外見を超えたところに見える服装と精神の合体であり、ある種のお洒落哲学のようなものを持っている人達のことを指すのである。 |
叛逆精神。ストイックな生き方、生き様を指すのでしょう。見た目だけで
はなく、流行というものに左右されない姿勢こそがダンディズムの哲学
であるわけです。
また、ダンディのお手本と言われた、イギリスのジョージ・ブライアン・
ブランメルを通して、林勝太郎氏は次のように述べています。
着こなしの上手な人間は、けっして衣服によって、目立ってはならない。いかなる種類であれ、派手な模様はいっさい寄せ付けてはならぬ。上衣がつくられる色において地味であるが、識者の目から見て立派でなければならない。フィットは一部のたるみもなく完璧で、体の自然の線に従わなければならぬ。衣服のなかで気粉れが許される唯一の部分と言えば、ネッククロスの配置だけである。 |
非常に難しいです。地味で目立ってはダメ。でも服飾有識者達を唸らす
アイテム、着こなしを行うことが、ダンディズムなんですから。一体どれ
だけの日本人がこれをできるか、といえばほぼ全滅だと思います(笑)
でも、これはあくまで1つの考察であり、日本人である以上、プロポーション
や顔も違うので、変わってくる部分もあると、私は思いました。
1つ理解したことは、アメトラでも、ブリトラでもクラシックスタイル(定番)の
着こなしはいつも流行を追うファッション誌とぶつかり、矛盾を生むんです。
それは不思議なことではなく、ある意味必然的なことだということ。
クラシックスタイルの場合、当たり前のことが、ファッション誌ではダサい
という言葉で片付けられる。逆にファッション誌で「今季の着こなしのは
これで決まり!」という特集は、クラシックスタイルからすると、邪道の
部類に入ることが多いです。
ダンディズムの定義の1つの側面に、ファッション・デザイナーの流行服
(モード服)ではなく、服装のルーツに沿った正統派の伝統的な服装を
指す、とあります。
以上から、始めから、トレンドとクラシックスタイルはぶつかる関係にあり、
このクラシックスタイルの元祖がダンディズムにつながっているのでは
ないか、と思いました。
叛逆精神とは、全てを否定するのではなく、時の流れに左右されるのでは
なく、男の道を貫く精神性のことを指しているのであり、ダンディズムの
根底にある哲学だと思います。
以上、簡単に紹介させて頂きました。詳しくは、上記の2冊を読んでくだ
さい。ものすごく読みやすいです。最後に林勝太郎氏の
「ダンディズム=おしゃれ」論を書いて終わらせて頂きます。
おしゃれとは服装だけの問題ではない。むしろ、精神から来る意識のありかたが重要である。つまり、服装と精神とが一体となって磨きをかけ、ある種のこだわりを持って、おしゃれの作法を切りひらくことが大事だ、と私は考えている。 英国ではこれをダンディという。精神論敵な意味合いでは、さらにイズムをつけてダンディズムと呼んでいる。つまり、イズムとは精神的論理のものなのだろう。
習俗に対する叛逆の精神を持ち、モノにこだわって服装を調えることは、いまも大切なことのように思う。その上で自分自身の個性と感性で魅力的に装うお洒落の決め手であり、根本的なところは、いまも昔もそれほど変わっていないのではないだろうか。 |
ちなみに、モードとクラシック、どちらのほうが良いとも悪いとも言えませ
んが、普遍妥当性(いつでも、どこでも、誰でも)はクラシックスタイルに
軍配があがると思います。以上参考になれば幸いです。
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ダンディズムという言葉は落合正勝氏が多用するので、クラシックスタイルで合っていると思いますよ。
ブリトラにはまっているなら、中野 香織さんの「スーツの神話」もお薦めですよ。
ブリティッシュトラッドを象徴する用語には、「ダンディズム」と双璧を成す
もう一つの柱がありますよね。そう「ジェントルマン」です。
二つの精神が歴史の中でどう生まれ、どう対立し、どう現在の形に折り合ったか。
具体的なお洒落指南からは外れますが、この本はブリティッシュ・トラッドを
より深く楽しむ格好の道標になると思いますよ。
何故日本の新閣僚が写真撮影の際、日が暮れてもモーニングを着ているのか?、
みたいな疑問も歴史的な背景から理解できたり。タイトル通りのスーツに関する薀蓄も
満載です。機会があれば是非読んでみてください。
しかし、クラシック(特にブリトラ)って突き詰めると「お洒落」じゃなくて「ルール」
ですからね。精神性はあんまり真似しない方が、楽しむ分には良いかもしれないw
同意ありがとうございます。
> laki さんへ
おお!また素晴らしい情報を、
ありがとうございます。読んでみます(^ ^