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2008年10月09日

ファッションショーの音楽に生ライブが多くなった理由

■ライブは、今そこで生きている瞬間を共有できる

これは、ディオールオム2008-2009A/Wのコレクション。弦楽アンサンブル
中心のライブになっています。エディスリマン時代は、イギリスの若手ロック
ミュージシャンがコレクションの中で演奏したりしていました。WWDによると、
2008-2009A/W コレクションは、生演奏が比較的多かったようです。それが
なぜかを簡単に考えていきます。菊池成孔氏の、
「服はなぜ音楽を必要なのか?」も必読ですが、今回は脳科学者の茂木
健一郎先生の書籍の力をお借りします。

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茂木 健一郎

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茂木健一郎先生はいわば、音楽オタです。半端じゃないです。造形が深い。
あらゆる音楽ジャンルを聴き倒してきたようですが、クラシック音楽について
は、並々ならぬ思い入れがあるようです。シューベルトがお好きなようで。
シューベルトが好きなんてカッコイイなぁ、茂木先生・・・。

さて、話をもどして。なぜライブ音楽がコレクションに多様されているか、
その理由を考えるには、ライブと録音の違いを考える必要があります。
茂木先生は書籍「すべては音楽から生まれる」の中で、ライブと録音に
ついて、こう述べています。

 音楽における体験の豊かさや感動の深さという点では、「ライブ=生演奏」に勝るものはない。どんなに素晴らしいライブでも、録音では、演奏会場での感動と同じものを享受することはできない。脳へサインを送る力というものを考えると、CDDVDの音は、ライブ演奏を超えられないのである。


脳科学の側面から考えられています。神経伝達という側面において、
生のライブのほうが伝達する力と、量ともに強いとということだろうと
思います。続いて以下のようにわかりやすく説明しています。

録音・録画されたものは、既になにかが起きたかわかっている。たとえ自分が初めて聴く演奏であったとしても、いわば「死んだ」情報が再生されているにすぎないからである。録音はあとで何度でも聴き返すことができるが、その場にいたという感動を超えるものは期待できない。

しかし、ライブ演奏は、今、ここで、生きている。私たちが生きているのは「今、ここ」以外のなにものでもない。オーケストラの人たちも聴衆も、同じ時間と空間で息をしている。そこで起こることはいつも未知であり、起こったことは瞬く間に過ぎ去る。再び帰ってこないし、戻ることはできない。ただの一度きり。それが、ライブだ。コンサートは、消えていく。その事実に呆然とする。どうしようもないとわかってもなお、悲しい。だが、その儚さもまた音楽の本質の1つではないだろうか。それはCDが発明されたあとも変わらない。

茂木先生流の論理的かつロマンチックでセンチメンタルな回答だと
思います。そのとき、その場かぎりでしかない儚さ、それを求めて生
ライブに人は足を運ぶ。ゆえに、演奏者も聴き手も精一杯楽しもうとする。

儚さというのがいいですね。その瞬間しかないから聴き逃したくない。 

茂木先生は録音音楽か生ライブかで、聴き手の聴き方が変わってくると
いうことも触れています。つまり、録音音楽はいつでも同じ音楽(波長)
が耳に入ってくるので慣れてしまっている、つまり、少しでも受動的に流して
聴いている。一方、生ライブは、今その場の空間で発せられている生の音
(波長)を、積極的に耳から脳に伝達させて自分の価値感、経験により
解釈し感じる・・・、能動的な行為を行うのです。

若干、僕なりの解釈も入っていますが、実は、演奏しているのは音楽家だけ
でなく聴いている自分もが演奏に参加している。それが生のライブという
主旨を茂木先生は述べられています。

これは、5.1chのサラウンドにしようが何をしようが、演奏者と同じ空間
ないかぎり、起こらない心理ではないでしょうか。聴く側の環境の向上では
なくて、経験として演奏者と同じ場所にいるかが大切なんです。
ベートーヴェンの運命のCDを何枚持っていても、演奏会があると絶対
行ってしまうのと同じ。

さて、以上のことを踏まえた上で、コレクション、ファッションショーでのライブ
の意義です。ファッションショーは、音楽と同様、今まさにそこで行われている
事実なんです。リアルワールドなわけです。あとで、録画された映像を何度
見ても、それはもう終わってしまっていることであり、その場で見たもの以上
の感動は得にくい。音楽と同じだと思うんです。だから、デザイナーも30分
足らずのファッションショーのために、半年もかけて悩みぬく理由があって
しかりなんです。中にはバイヤーや服飾評論家、メディア関係者をたくさん
招いているから、必ず感動を与えたいとどのデザイナーも思っている。

それが、次回のファッションショーへのモチベーションになるから。

だから、音楽も生のライブなんだと思うんです。録音されている音楽を
流しているのは、スピーカーから出る姿なき波長なんです。それが全く効果
がないとは言いません。しかし、演奏者がいて生のライブ形式で行うと、
演奏している生の音が、生のファッションショーと調和して相乗効果を生む
と思うんです。相乗効果を生む根拠は言うまでもありませんが、ファッションと
音楽があまりにも密接な関係にあるからです。

これは、私の研究課題でもありますが、菊池成孔氏の、
「服はなぜ音楽を必要なのか?」を読まれることをオススメします。絶対、
相関関係があるはずです。

ファッションショーは、そのデザイナーのクリエイションの集大成。ある種、
オペラと同じ言ってもいいかもしれない。筋書き、音楽、演出、装飾すべてに、
デザイナーは深く関わります。服の新しい提案のために、あらゆる可能性
を模索するのであれば、生のライブが出てくるというのは当然のことなん
だと思います。これが、今のところの僕の結論です。

さて、もう1度、ディオールオム2008-2009A/Wのコレクションにもどりま
しょう。クリスヴァンアッシュは、エディスリマンの無駄をそぎ落とすミニマル
さやタイトさ、黒中心の色使いとムッシュディオールのクチュール、
エレガンスをオマージュとして表現するために、上の動画のようなコレクション
にしたようです。

そして、クチュールを表現するのには弦楽アンサンブルが必要だったと
述べています。
さらに、ベルギーの現代作曲家に頼んだ曲は、ミニマル音楽(短いフレーズ
を繰り返す音楽のことで、日本ではYMOなどが先駆け)です。作曲家自体
がミニマル音楽が得意。

高級感を醸しだす弦楽器によるハーモニーとムッシュディオールを意識した
フォーマルスタイル。そして、無駄をそぎ落としたミニマルなデザインに
ミニマルな音楽、そして生演奏、クリスヴァンアッシュの考えは理にかなって
いるというか、服と音楽がいかに密接な関係かを示していると思いました。

これからも音楽と服、いろんな角度から考えていきたいと思います。
また、服好きのほとんどは音楽が好き(圧倒的にロックだと思いますが)な
理由も調べたいと思っております。

posted by No.9 at 21:04 | Comment(0) | TrackBack(0) | 議論 | 更新情報をチェックする
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