■これからのファッション産業の展望
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繊維産業の展望と課題 産業構造審議会繊維産業分科会 時事画報社 2008-10-30 売り上げランキング : 443446 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ファッション業界の先行きに興味のある人、繊維産業について
研究している学生さん、あるいは調査している人には美味しい本が
出版されました。この「繊維産業の展望と課題」は、経済産業省製造
産業局繊維課が編集したものです。出所が公なので、さっぱりしっかりな
内容となっています。経済産業省、総務省、財務省、矢野経済研究所、
WWDジャパン、日本科学繊維協会、ゴールドマンサックス社といった、
名だたる組織の豊富なデータと大きな画が載って1,260円なので、
お安いかと思います。これをもとに、今の日本の繊維産業の抱える
課題・問題と一筋の希望の光を、僕の考えから簡単に紹介したい
と思います。 ぜひ、直接読んでみてください。資料としても優秀。
【繊維産業の課題・問題】
・経済発展を続ける中国の存在と日本生産の激減
以下のグラフをパッと見ると、分かることがあると思います。
【出典:繊維産業の課題と展望】
どのグラフも、右肩上がりなんです。簡単に言うと、中国で生産された
服の輸入と、中国での繊維産業生産額の時系列推移です。だいたい
1990年からの統計。バブル絶頂期から崩壊に向かう時期からのデータ
です。どこのアパレル企業も中国にどっぷりつかっていたことが簡単
にわかります。この時の日本のアパレル企業全体が、大量生産による
効率性と人件費の削減だけに躍起になっていた時代。海外縫製から
海外一貫生産と、完全に工場を中国に建てていきました。2005年までの
データまでなので、今でもその方向性は完全には変わっていません。
・斜陽産業化される日本の実力ある製造工場たち
これによって、日本での生産指数は激減。1998年には120あった指数
が2005年では50になりました。半分以下です。もちろん、日本の製造
工場も破綻していくところが後を絶たず、若者の間では繊維製造業は、
斜陽産業であるという意識が定着してしまっている。就職を求める数
も少ないようです。これが生産・技術の空洞化現象です。
・国内人口減による市場縮小と原油高
少子高齢化の進みも、繊維産業にボディブローとして効いてきています。
人口約1億3,000万人にである日本人は、2005年を頂点として、減少の
一途を辿ることが、予想されています。ちょっと怖い数字なんですが、
2055年には最低で人口8,000万人になると。そして日本の国内衣料品
市場は、3分の2まで減少するであろうという、統計が出ています。
原油高もバカにできません。業種別の工場生産額に占めるエネルギー
コスト比率、鉄鋼業が1位なのは皆さん分かりやすいと思うんですが、
2位に繊維工業なんです。意外にエネルギーコストがかかっています。
とまあ、問題山積なんですが、日本の繊維産業に光はないのか、という
と、そんなこともありません。
【一筋の希望の光】
・産地の匠の技
日本の繊維産業の強みとして、海外の高級ブランドを生産している技術
力のある匠がいること。ジャンポールゴルチェの1,200万円するドレスの生産
は、岩手で生産。しかし、これまで取り分(マージン)があまりにも低かった。
また、日本のクリエーターとの協同作業がなかったなど、クリエーターと
職人の共通認識と共通信念がなかった。
しかし、岡山県、広島県のデニム作りは、今や世界中が注目している。
またそこから生まれた付加価値を用いて立ち上げられるブランドもある。
ジョンブルなどがその1つ。
今流行りのメガネなどは、国内の9割が福井県で生産。ヨーロッパに押され
ていたが、福井県オリジナル高級ブランド「ジャポニズム」を立ち上げ、世界の
市場を奪還すべく力を入れている。ティムハミルトンは関西の工場を使用。
このように、スーパーブランドが日本の実力のある工場を使うことによって、
製造工場自体がブランド化して、今のイタリアのようにファクトリーとしての
威厳と発言力、提案力を発揮していけるポジションになる。これが国内生産
の発展につながると、僕は思いました。
・世界に認められ期待される日本のクリエーターたち
世界のバイヤー70名から優秀なデザイナーランキングをアンケート
したところ、上位60位以内に6人いることがわかった。これは、結構
大きな数字ではないでしょうか。そして、1998年から2005年の順位
の推移を見ても、山本耀司氏が4位なんです。その上は載っていないん
ですが、ジャンポールゴルチェとカールラガーフェルドとアルマーニ?
11位に川久保玲氏。18位に渡辺淳弥氏、27位に三宅一生氏、
39位に高橋盾氏と日本人デザイナーが上位にランクインされています。
これに加え、海外は日本の品質のよさとデザイン性に秀でていることを
感じているそうです。衣服のこだわりのポイントは、もはや流行ではなく、
品質、機能性、デザイン、価格の4大要因となっているそうです。だから
こそ、デザイナーが日本の匠と深く関わって相乗効果を生む必要がある。
ワンマン丸投絶対主義ではなくて、もっと製造工場と深く関わり、糸メーカー、
紡績、縫製などをフラットにしたコンバーター兼アパレルとする、新しい
産業集積として喧々諤々にやっていくのが、新しい価値が生まれそうな
気がします。これは、イタリア式ブランドビジネスの育て方に詳しく載って
いて、所謂ファクトリーブランド誕生のきっかけにもつながります。
【感性価値創造の担い手となる】
最終的には、消費者の感性に訴えるアイテムがどれだけつくれるかが、
日本の繊維産業の未来を決するという主旨を、「繊維産業の展望と課題」
から読み取りました。感性・感情・経験・無意識というのは、今日のマーケ
ティングで最も研究されている分野の1つですが、「価値」という概念をどう
消費者に伝えていくか、広告宣伝だけでのイメージ作りでは伝えられないと、
述べられています。僕もそう思います。消費者の主観的な目利きにあった、
クオリティーの高いアイテムを生み出し、どう顕在化させるかがこれからの
重要な要因となることは、否めないと思います。「創発(消費者とともに市場
をつくる)」という発想が求められているのかもしれません。
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