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2008年11月25日

「焼肉小倉優子」から学ぶ、ブランド拡張の境界線の考察

■「親近感」×「ギャップ」=「新市場の開拓」無意識マーケティングの1例

タレントプロデュースの飲食店、ファッションブランド急増中!日経

『飲食店経営』(商業界)20086月号によると、『焼肉小倉優子』誕生の経緯は、飲食業界に興味のあった小倉が、関西の焼肉チェーン会社社長と知り合ったことで、実現したという。

最近の芸能人プロデュースの店はタレントの趣味が高じて個人的に始めるのではなく、企業とタッグを組んで展開するものが増えている。そのため、複数店舗を展開するケースも多い。

オープンから短期間でいかに世の中にお店の存在を知らしめるかが、その店の命運を分ける。そこでタレントの出番だ。うまくいけば、オープン時にはマスコミが取り上げてくれる。さらにタレント本人がブログを持っていればそこを媒介して宣伝できる。また、普通の焼肉屋に行っても、友人に話したり、ブログに書いたりはしないが、もし『焼肉小倉優子』に行ったとしたらどうだろう?おそらく「昨日、焼肉小倉優子に行ってさ」と友人に話したり、ブログに書いたりするはずだ。この口コミで広がる宣伝効果が侮れないのだ。

 ミスマッチをうまく利用して集客を図れるのもタレントプロデュース店の特徴だ。一見、飲食店の経営とはかけ離れた存在のアイドルやお笑い芸人などの出店が目立つ。「焼肉というと男らしいイメージが強い。あえて小倉優子という女性で、しかも親しみやすいキャラクターのアイドルを組み合わせた面白さが『焼肉小倉優子』の集客力の高さの秘訣では」と中村氏は見る。

焼肉小倉優子ですよ。すごい名前ですよね。でも、これはこれからの
マーケティング、しいては、ブランド拡張戦略に大切な示唆を与えています。
この辺は、僕も学生時代勉強していたので、非常に興味深いです。

無意識マーケティングは、流行りのバージョン系で言うところ
のマーケティング3.0です。無意識マーケティングの1つの効果として、
ブランド拡張戦略を使って説明しようかと思いました。そして、それには
焼肉業界で話題となっている、焼肉小倉優子がふさらしいかと思って
取り上げてみます。

結論から言いますとね、既存の親ブランドからのイメージを分けるブランド
拡張戦略ではなく、カテゴリとして関係性がなくても感情的に「好き」である
モノ・コトを結合することにより、新しいブランド価値を有する市場が開拓
されることを上記は示唆している。その境界線は、結合する2つの概念に
対して、消費者がこだわりとプラスの感情を形成するある種の社会的情動
の働きを成していることがキーポイントとなる。
図示すると以下のようになる。

model1.jpg

さて、わけがわからなくなったあなた、なるべく簡単に説明していきます。
簡単といってもマーケティング、広告論、消費者行動論を勉強したこと
がないとちょい苦しいと思います。分からなかった言葉はあとで調べて
頂けたらと思います。最後に参考文献も載せますので、
そちらを読んでもらえれば。

ブランド拡張が成功する要因としてブランド拡張への態度が大切だと
Martinは言っています。そして、その要因として、Martinは認知的な
「ブランドイメージ」が大切であると述べていますが、僕はNOを出して
アドホック(目標探索)が大切だという仮説を立てました。もっというと
3つの要因が大切だと思っています。それが情動、アドホック、関与
です。この3つを中心に、どうして「焼肉小倉優子」が成功している
のかを考察していきます。

 

 

 

 

【そもそもブランド拡張とは 成功と失敗】

ブランド拡張については、以前の記事を読んでもらいたいのですが、例
を出すと、もともとは少女の遊び道具などに使われていたハローキティが、
今では証券、電車、遊園地、自動車、ゲームなどに使われるような、
築かれたイメージのおすそわけです。新しい商品・サービスの市場投入
の代理人のようなものです。ハローキティはカワイイだけでなく、信頼や
絆、親近感というイメージを持っています。それを分けることです。
あとは、ソニー生命、ソニー銀行なんかもわかりやすい例。

さて、この既存のブランド拡張戦略は上記のように、イメージを分ける
わけですが、あまりにも両者の物理的ないし製品カテゴリのイメージが
違うと、失敗すると言われています。有名な失敗例がユニクロの野菜を
中心として生鮮食品市場に事業を拡大したことです。10年以上前の
話ですが、結局ユニクロのイメージに生鮮食品との間にリンクは
つながりませんでした。詳しく極東ブログをご覧ください

 

 

 

 

 

【ブランド拡張の基準 意識的な知識からの試み】

こういったどこまでが成功する境界線かが難しい。そして、ブランド拡張
の境界線は時代とともに消費者マインドの中で基準が変わっていく。
だから、マーケターは普遍性を探すわけです。1990年代は、「似ている」
ということ探してきた。それは、ブランドイメージだったり、製品カテゴリー
などの、意識的かつ認知的な一致性にブランド拡張を見出すことに躍起
になっていました。しかし、 市場環境がさらに不透明かつ成熟していくと、
さらなる普遍的なつながりを探すようになります。これは、「好き」「嫌い」
という感情です。感情は無意識です。この無意識のつながりに注目した
のです。これがなかなかいい。
それが以下に述べる、情動や感情、関与の存在です。

●精緻化見込モデルの誤算 周辺ルートの重要性

さて、タレントプロデュース事業です。小倉優子と焼肉。この絶妙な
ミスマッチ、ギャップがいい。一瞬極端な不一致じゃないか、と思われる
かもしれませんが、情動の理論と関与という理論を持ってくると、 極端
な不一致ではなく、しっかりとつながり結合された、イノベーション的な
マーケティングなんです。

関与というのは、簡単にいえば「こだわり」。PettyとCacioppoが提唱
した精緻化見込モデルという理論が脚光を浴びたことにより、さらに
重要視されました。情報が記憶に入ってきた場合、そのモノ・コトに対して、
高関与である場合→中心的ルート、低関与である場合→周辺的ルートを
通るという2つのルートが描かれています。以下香川大学関係のサイトから、
お借りしてきました。

involv_per[1].jpg

【出典:10章 消費者の態度形成の変容

高関与というのはこだわりが あるという意味です。あるモノ・コトに
対して高関与だった場合、人間の情報処理活動(考えること)は活発化しま
す。要するに、関心を持って一生懸命考えたり調べたりするということ。一方、
低関与は、その場の外的環境の影響を受けて、なんとかく行動したり、
考えないで意思決定をする。簡略化され適当に選択することになる

キッコーマンの醤油なんかは、切れたら買い足しますから、きまりきって
いることです。これは低関与。サクッと購買行動まで行ってしまうこと
です。ところが、醤油にこだわりのある人は、この地域のこの銘柄の
醤油が、この料理に合うのではないか、といろいろ探ります。 これが
高関与。

●情報が既存のものと適度に不一致のとき人間は積極的になる

高関与は、あとからちょっと面白い点があることが発見されます。
モノ・コトがいつもとちょっと違ってユニークである場合、人間はより
興味を持って、考え態度形成をするということです。

これは、Mandlerという認知心理学者が 提案したカテゴリー情報処理
理論です。人間の知識というのは、 様々な形で分類されて概念どうし
がネットワーク上につながっている、 と言われています。これを意味
ネットワーク(知識の正体)と言ったりします。過去に得た情報の塊
(スキーマ)どうしがネットワークに連鎖されていると言われています。
詳しい 説明は割愛します が、興味のある方は以前の記事をご覧ください

そんな精緻化見込モデルですが、1つ大きな問題があるという意見
があります。それは、周辺的ルートは感情の役割が軽視され、
態度変容の間接的ルートとしてまとめられてしまっており、さらに
中心的ルートと周辺的ルートが並列的、同時的である可能性を考慮
せず二者択一にしてしまっている点。要するに感情を無視して、
人工知能、コンピュータサイエンス的な考えである、冷たい認知科学
的な考えであることに、無理があるんです。

そして、この周辺的ルートと中心的ルートというのはお互い相互
作用を持っているものであり、それは「意識」という世界から「無意識」
の世界へ行かないと見えてこないのです。

さて、一方皆さんは思うはずです。 おいおい、ちょっと待ってくださいな。
焼肉と小倉優子は極端に不一致でしょう?と思う方がいるでしょう。
ブランド拡張だったら離れすぎだよ!と思いませんか?
ユニクロの野菜と同じですよ!みたいな。

そこの辺を論理的に説明できるのが、現在 マーケティング界の最先端と
なる脳科学です。感情です。もっというと 情動です。 関与は関与でも
無意識の世界の関与のようなものがあるんです。僕はこれを、情緒的関与
と呼んでいます。無意識情報処理とも言える。それは、知識形成の前の
段階、ニューラルネットワーク という神経伝達により形成されるマップで、
自律神経の働きによりどんどん形を変えていきます。ポイントは、
小倉優子と焼肉が「好き」か「快」かどうか。

 

 

 

 

【ブランド拡張の基準 無意識の世界からの定義】

無意識にあたる情動とは?感情とは?

情動とは感情への架け橋で、脳の神経伝達物質が体の中に伝わり
体に起こる様々な反応です。それは、怒り、恐れ、喜び、悲しみといった、
急激に生起し比較的激しい一過性の心的作用。自律神経の興奮とも
言える。悲しいから泣いているんじゃない。マイナスの情報が泣くという
形で身的反応がおき、悲しくなるというのが、1例です。そしてプラス、
マイナスの情報かどうかを判断する根本の司令塔が脳の中にある
扁桃体であることが分かっています。こちらの図で確認できます
情動を生み出す親分です。 いままでなかったもの、ユニークなものに
関してはプラスになる可能性が高いとされています。「焼肉小倉優子」
なんかはユニークですね。 逆に「焼肉」と「小倉優子」を離すと、なじみ
のある食べ物、タレントですねぇ。しかもお好きな方はたくさんいる
でしょう。だから、もうこの2つの情報は非常に美味しい情報として、
意識的かつ無意識的に蓄えられています。これは、接触した瞬間に
脳の前頭連合野に、ドーパミン・ノルアドレナリンがという神経伝達物
質が出ることによって体に反応が出ます。

焼肉小倉優子は、好きだし親しみのある概念どうしが結合してユニーク
になった。これは扁桃体にとって、2度美味しいわけです。強力なプラス
の反応が、ブランド拡張の態度として出るというわけです。

一方、感情とは 情動の結果とも言えるし、相互作用のある知覚とも
言える。そして感情は、情動からくる情報がプラスなら、プラスの関係
を持つニューラルネットワーク(マップ)に「それをマークせよ!」と付箋を
つける。このネットワークは、「ゆらぐ力学」と言われ、知識のような概念
の集まりのように固定されず、どんどん形を変えていく。 人工知能的
な理論(意味ネットワーク)とは違うのです。 これについて、ノーベル生
理学・医学賞を取ったエーデルマンは、記憶細胞をカテゴリー化すると、
類似性が認められるということを発見。これは新皮質=類似符号化の
視点から脳科学を説くダマシオと同じ考えで、まず入ってきた情報は
「好き」「期待」でなどで選別されていくと述べています。それが、
「それをマークせよ!」です。だから、その時の状況で、並列情報処理
(ニューラルネットワーク)としてモジュール化され、形成され変わり、
形成され変わり、を繰り返すと言われています。

以上から、もう一度考えてみると、自分の人生においてプラスとなる、
つまり扁桃体がよろしい!とお墨付きつけたモノ・コトは、「大好き」
という感情になるための社会的情動として体に命令をし、上記の
認知プロセスに至ります。つまり無意識の世界の働きなので、
知識と相互作用はあるものの、意識的な認知プロセス、つまり精緻化
見込みモデルよりも前のことになるんです。 このような情動の働き
で、好き、嫌いがはっきり分かれる活動をソマティックマーカと言います。
もう1度「焼肉小倉優子」を思い出してください。これは、「焼肉」と
「小倉優子」という情報そのものが、もう好き好き大好きという人
がいるはずなんです。それが、無意識情報処理でつながったんです。

そして、それはギャップがあるためユニークであり、かつ親近感が
ある2つの情報の結合。もうそう なると、適度な不一致とか極端な
不一致は関係なくなります。その人の感情、社会的情動と、経験
から成る知識との相互作用の結果です。

扁桃体という人間の体の一部が、無意識という世界を作り出し、
体に反応が出てブランド拡張の境界線を拡げたことになります。
これは、差別化ということが無理だと言われる現代の成熟社会や
行き詰っている市場環境に対応するマーケティングとして、希望の光を
灯してくれました。市場を創造することは、不可能ではない、という
ことです。

 

 

 

 

 【意識と無意識のはざま アドホックの働き】

●目標導出カテゴリーの重要性

以上のことを踏まえた上で最後の要因。アドホックが重要となって
きます。アドホックとは、目標探索という意味で、認知心理学の理論
ですが、感情のもとである情動と、思考のもとである認知・知識の間
にある活動です。

情動→感情の生成、ここまでが「無意識」であるならば、アドホック
という考える活動は「意識」と「無意識」のはざまです。このアドホックは、
経験学習といって、 生まれてから今日まで記憶にインプットされた習慣
です。「火事のときには消防署」などAのときはBという風に習慣化され、
一瞬の反応で情報処理活動を行うことを指します。これを目標導出
カテゴリーといいます。もともとは、生命を 守る(ホメオスタシス)という
人間の根幹的な無意識な学習活動、つまり情動の積み重ねで形成
されカスタマイズされた活動です。

アドホックは、目標導出カテゴリーから目標を達成するためという
状況のもとで働く、探索行動。知識という図書館から情報を出し
入れする、またそれが目標に対して的確なものであることを求める
ことです。Bagozziが、2001年に提唱した目標行動志向モデルは
プラスやマイナスといった感情が欲求を引き起こし、欲求は行動
意図に結びつく動機的要素をもたらすものです。だから、上記の
モデルでは、アドホックという要因を欲求で覆っています。
さて、結論は次のページで・・・。

続:「焼肉小倉優子」から学ぶ、ブランド拡張の境界線の考察

posted by No.9 at 18:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | そもそも「ブランド」とは? | 更新情報をチェックする
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