前の記事からの続き。情動・アドホック・関与を説明してきました。
これを使用し、消費者が焼肉小倉優子に対して斬新でいい!と
思うメカニズムをシミュレーションしてみます。
●情動・アドホック・関与からブランド拡張態度形成までのプロセス
無意識情報処理:焼肉小倉優子という情報が入る。すると、「焼肉」
「小倉優子」=なじみがある、好き、期待いろいろな反応が扁桃体
から出る。これは海馬や側頭葉、新皮質と相互作用的に処理する。
と同時に、焼肉小倉優子?ユニークだねぇ。面白い。wktkの反応が
溢れる。ドーパミンがかなり出る。それを受け取った意識部分では、
変わった情報(でもプラス)なもんだから一生懸命、関心を持って
思考という行動に出る。これが関与(高関与)の働き。
また、同時に焼肉小倉優子の情報が無意識と意識の2つの結論
の整合性を合わせていく活動を行う。それは情動から生まれたプラスの
感情、過去の知識との照らし合わせ。自分の過去の人生経験から、
その情報の重要度を算出する。それが欲求へとつながり、ブランド拡張
への態度をプラスに形成する動機付けとなって現れる。
以上のように、情動・アドホック・関与がブランド拡張の境界線を引く
1つの基準となるのではないか、と考えています。今までの、
製品カテゴリーがどうのこうの、ブランドイメージがどうのこうのだけ
で線引きをするのは、通じなくなってきているかもしれない。調査は
もっと深く深く、視野は大きく広々と見ることが、マーケターには必要
だと感じました。
●ブランド拡張の境界線は時とともに無限に拡がる
今回は、焼肉小倉優子が面白くて題材に使いましたが、冷え込みが激しい
飲食業界、焼肉業界でこのようなサービスが生まれているわけですから、
他の業界もまた然りです。どちらかというと、人工知能、コンピュータサイ
エンスといった、システムやプログラムで人の行動の根源を探してきた
こと自体に無理があり、LISPなどでシミュレートしたところで、人の心は
わからないということです。ノーベル生理学・医学賞のエーデルマンは
「私の目的は、心を生物学なしに説明しようという考え方を打破する
ことだ」と述べたように、脳科学、神経生物学的な側面を加えつつ、ブランド
拡張のチャンスがどこにあるかを考えることです。
そして、時とともに、ブランド拡張の境界線は変わっていきます。前述で
失敗したユニクロの野菜事業も、もしかしたら好意的に思われる時代
が来るかもしれないし、既存のモノ・コトが情動的にプラスに働いて
いれば、合わせることによって新結合ができる、イノベーションが生まれる
のです。これをファッション業界でも使えたら面白いですね。福助が成熟
市場のストッキング業界でヒットを連発しているそうですが、これもプラス
の情報どうしの新結合かもしれません。
●本考察の課題
「価値」というものについて、触れられませんでした。ある種アドホックにも
関係してくることなんですが、2001年から特に研究されている価値の創造。
言葉だけが一人歩きして、その本質をマーケティングにうまくフィットさせた
人はいないと思います。自己概念とかパーソナリティ、価値観の軸を
研究しているものは多々あれど、価値が何かしらの形で、人の消費行動
に強く影響していることは否めないと思う。しかし、本考察ではそれを避けた。
ちなみにピーターとオルソンという消費者行動学者は価値とは、目的と手段
の連鎖だといった。この定義を前提にして持ってくるならば、アドホックとして、
モデルに組み込めるかもしれない。
また、情動の研究、つまり脳科学の研究そのものが、まだまだ始まった
ばかりで、課題が山積しています。情動を数量化することは、感情に置き
換えればできますが、情動の働きそのものを数量化するのは厄介です。
大手調査会社のニールセンが、最近ようやく脳波マーケティングの調査に
着手し、CMの効果などを調べているところです。脳波は、個人差があまり
ないようなので、サンプルが少なくて済み、かつ数量化できるとあって注目
しています。しかし、脳波で人の感情や経験学習プロセスを見通すことが
できるとはにわかに信じがたい。
またfMRIを用いて人間の脳の働きを調べて、消費者の意思決定プロセス
といった、マーケティングに生かそうとするニューロマーケティングが台頭
も無視できない。しかし、過度の認知科学の方向に傾いたように、ミクロ
な単位におぼれ、自己満足的な理論が飛び交うのも問題になると思い
ます。
情動・アドホック・関与の3要因を使いました。もともとはMartinのモデル
では、ブランドイメージの要因がブランド拡張への態度形成に影響を
与えるというものでしたが、アドホックと関与の2要因のほうが、より
影響を与えるということを、共分散構造分析という統計分析を通して
かつて証明しました。しかし、それに情動を入れた場合のモデルの
当てはまりのよさは確認してません。あくまで既存の理論構築の流れ
から、述べただけなのでこれからの課題です。
ではでは、次の記事で、参考文献をご紹介します。マーケティング、
心理学に興味のある人は、読むことをオススメしたい素晴らしい本です。
広く公開されるわけですから文章としておかしい点は正してからアップすべきだと思いますよ。
ちゃんと推敲すれば接続詞が足りなくて文の繋がりが分からない点・誤字脱字・過度の体言止めなどには気づけるはずです。
とりあえずマーケティングの世界にも脳科学の魔の手が迫ってるんだなということは分かりました。
それと誤解されてたらアレなんで書きますが、人工知能とかシミュレーションって生物学で語られるミクロ単位のデータを基にモデル化してるわけで、プログラムだから無理!脳科学なら可能!ってなことはないと思いますよ。
むしろ生物学とかはミクロな物質のやり取りにはご執心ですが、それがマクロへどう影響するかっていうモデル化が下手くそだったり、そういう視点が足りなかったりという点が指摘されてたりもします。
人間は未知な面が多く、それゆえに研究対象として非常に興味深いですが過去には寄生虫でガンが発生するなんていうトンデモがノーベル賞を受賞したこともあります。
あんまり盲信し過ぎるのも危険ですよ。
僕には難しい内容で、あまり理解できなかったのですが。
その中で気になったことがあります。それは、マーケティング能力の優劣が、消費に大きな影響を与えるんだろうな、ってことです。
当たり前ですね。
しかしそれは、消費者にとって良いことなのでしょうか?
もっと本質的な部分で、努力していただきたいなぁと思います。
例えばイメージよりも、価格と品質のバランスのほうが重要なのではないでしょうか?
誤字脱字はすいません(汗)何日かかけて書きたいのですが、時間がないので一気に書いてしまいました。少しずつなおしていきます。
脳科学についてですが、誤解があるかもしれないので、申しておくと、僕は妄信はしておりません。マーケティングはご存じのとおり、経営学、経済学、心理学、社会学、大脳生理学、歴史学、地理学、哲学、認知科学、統計学などから作られた産物にすぎません。なので、そこに脳科学という新しいパーツをはめ込んだ場合、こんなことが言えるかもしれないよ、ということで書きました。
かるぱさんのように、指摘や、議論をしてくれる方は大変ありがたいですね。非難中傷も受けて、ちょっと疲れていたので。
>tcさんへ
長くなって申し訳ありませんでした。
>>しかしそれは、消費者にとって良いことなのでしょうか?
非常にするどいご意見です。倫理的にはどうか?ある種、神経科学的に反応するものを、人間の消費行動に使って操るみたいなことは、商品そのものの価値が関係なくなってしまいますものね。そのことはこれからマーケティング学会で十分議論されるべきことだと思います。