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2008年11月28日

偽ブランド品に対する消費者の本音・意識の分析

■深刻化する偽ブランド品に関する意識を分析してみた

偽ブランド品の問題は、年々深刻化しています。なぜこんなにも偽
ブランド品が世の中に拡がるのか?その要因の1つとして、消費者
自身の意識の問題にあります。偽ブランド品を容認する人が多い
という。これは、高くて手が出ない流行りのブランド品に対して、
偽物でもそんなに変わらなければ安い方がいいじゃん、という価値観が
根底にあるのが問題。最近の偽ブランド品意識調査で驚きの結果が。

偽ブランド商品購入、5割超が「仕方ない」内閣府調査/日経ネット

内閣府の「知的財産に関する特別世論調査」によると、偽ブランド品や海賊版商品の購入を「仕方がない」と考える人が52.4%に達した。「どんな理由でも購入すべきでない」は39.9%にとどまった。ニセモノ商品への消費者の抵抗感が薄れつつあるとの見方が強まる中で、内閣府は「啓発活動の成果が出ていない」とみている。「仕方がない」と回答した理由は「正規品よりも安い」が27.3%、「正規品にはないデザイン・仕様の品もある」が7.5%、「公然と売っている」が17.6%。偽ブランド品を購入しないようにする国の啓発活動を「知らなかった」と答えた人は43.4%だった。

全く、アンチ偽ブランド品の教育が定着していない。国の働きかけ
も中途半端。以前は4割だった容認意識もとうとう5割超えです。だけど
どうでしょう?皆さんのまわりに、偽ブランド品を容認する人間なんてい
ますか?僕のまわりにはいないんです。「偽ブランド品は容認でき
ないでしょう」そんなことを言う人でいっぱいです。そこで、偽ブランド品に対
する本音・意識を探るため、コンジョイント分析を行いました。

コンジョイント分析とは、本音を探る統計分析技法。詳しくは、過去の
調査をご覧ください。「分析:女性は男性のどこに惹かれるか?
統計分析には、仮説というものが必要です。今回は、偽ブランド品を買う要因
となっているであろう「価格」と、ブランド品に関する「知識のなさ」に焦点を
あてて、20 歳から36歳までの男性5名、女性5名、合わせて10名に、
コンジョイント分析のための実験をしていもらいました。

【仮説】

「偽ブランド品は容認できません」、という人の本音は・・・、

1:ブランド品を買うときは、本物か偽物というより、価格が一番重要

2:商品の真贋に関する知識は持ち合わせていない

:やっぱりトレンド物が欲しいというミーハーな面がある

以下、簡単に分析手続きの説明を書きますが、興味のない人は、下の「分析結果」
をご覧ください。

----------------------------------------------------------

・分析手続き

この仮説を実証するために、前回の分析同様、プロファイルカードを統計ソフトSPSS
のシンタックスを構築して16枚つくりました。属性を5つ、水準を4つ作りました。

1価格意識:7000円の激安で財布が販売、どれを買う 1エルメス 2ルイヴィトン 3シャネル 4ポールスミス

2用心意識:ブランド品の買う決め手は何か? 1定価以下 2流行とデザイン 

3品質保証とアフターケア

3購買場所:日頃どこでブランド品をよく買うか? 1ネット及びオークション 2ディスカウントストア  3ブティック

4購買知識:エルメス以外で、上質本革のバーキンbagが販売。買う? 

1買う 2買わない

5優越意識:安くて上質でも、トレンドから外れているのは嫌? 

1嫌だ 2嫌ではない

プロファイルカードの1つは、以下のようなものです。これらを好きな順に、
1から16まで並べてもらい、データとしてコンジョイント分析を行います。

・プロファイルカードの例

プロファイル番号 3

7000円の激安で財布が販売、どれを買う?  エルメス

ブランド品の買う決め手は何か?  流行とデザイン

日頃どこでブランド品をよく買うか?  ディスカウントストアー

エルメス以外で、上質本革のバーキンbag2万円で販売、買う?  買わない

安くて上質でも、トレンドから外れているブランド品は嫌か?  嫌だ

コンジョイント分析は統計ソフトSPSSのシンタックスを構築し、算出しました。

----------------------------------------------------------

◇分析結果◇

結果がグラフに出ております。簡単に結果を言うと、価格への反応が
やはり大きかった。一方、商品の真贋についての知識、意識はあると
はいえない。一方、流行のものを積極的に欲しがるという傾向
はなかった。よって、仮説1と2は支持され、仮説3は棄却されました。
それではグラフを見ていきましょう。

1、7,000円の激安で財布が販売、どれを買う?

q1.jpg

質問1は、価格意識です。同時に、偽ブランド品への知識もはかって
います。上記の4つブランドで、激安の7,000円で買える財布は
ポールスミスのみです。あとのブランドが7,000円で買える確率は
ほとんどないでしょう。

特に、エルメスはあり得ません。そのエルメスが1番効用が高い。
早くも、被験者のブランド品の価格帯の知識がないことが露呈して
しまいました。

 

 

 

2、ブランド品の買う決め手は何か?

q2.jpg

ご覧の通り、定価以下という「価格」の要因がもっとも効用が高い。
仮説1を支持する根拠となりますね。逆に「流行とデザイン」はマイナス
の効用ですね。これはトレンド物が欲しいというミーハーな面がある
という、仮説3とは逆の結果です。

一方、本当ならプラスの効用にならなければならない、「品質とアフ
ターケア」がマイナスになっています。これは、よろしくない。というのは、
店頭で修理などのアフターケアをしてもらえるブランド品は本物だから
です。それよりも、とにかく安いものを!というのが心理としてあるので
しょう。

 

 

 

3、日ごろどこでブランド品を買うか?

q3.jpg

この手の質問には、被験者は警戒してガードがしっかりしています。
正規品しかない(はず)の、ブティックが圧倒的勝利なんですね。という
ことは、被験者は定価で買っているはずなんですよね?でも、質問2に
あるように、「定価以下」よりも「品質とアフターケア」の効用が高くなく
ちゃあいけません。この点、矛盾しています。ちなみにネットショップや
ヤフオクでも、よく調べれば正規品が手に入ることは、周知の通りです。

 

 

 

4、エルメス以外で、上質本革のバーキンbagが2万円で販売、買う?

q4.jpg

質問4は、購買知識として出しました。エルメスのバーキンは、知的財産権が
あるので、他のブランドがバーキン型のバッグを生産することは、最近禁止
になりました。この件に関しては、見事にパスをされています。このことを
知っての結果なのか、単にエルメスじゃないと嫌なのかはわかりません。

 

 

 

5、安くて上質でも、トレンドから外れているブランド品は嫌?

q5.jpg

質問5は、トレンド意識、優越感みたいなものを、はかるものでしたが、
こちらも見事にパスされています。この質問の結果からも、仮説3は
棄却されるべきだと考えたいと思います。

 

 

 

●5つの質問(要因)で、被験者がもっとも重要視している要因はどれか?

q6.jpg

以上5つの質問(要因)の内、被験者にとってもっとも重要視している
項目が出ています。これが一番大事なんですが・・・。さて、結果は、
1、7,000円の激安で財布が販売、どれを買う? がダントツの効用の高さ
です。次に、2、ブランド品の買う決め手は何か? が2番目に高い効用値
を出しています。これは、ブランド品の価格に対する意識がものすごく強い
ということです。特に、質問1のエルメスの財布が7,000円で買えると
思うあたり、ブランド品の真贋に対する知識と予防線が著しく低い、という
ことがわかりました。

仮説1と仮説2は以上で改めて支持されます。しかし、仮説3は棄却され
ました。 今回は、質問事項を考えるのにかなり努力はしました。上記の
ように、 トラップもつくりましたし、被験者の心理的なトレードオフも大変
だったかと 思います。しかし、大切なことなので、ちょっといじわるに
作りました。

■少し見解を■

以上が、偽ブランド品に対する人間の意識・本音です。やはり、ブランド品は
安く手に入れたいという思いが強い。それは、僕も同じだしこのブログを
始めたきっかけです。しかし、偽ブランド品をつかまされないための予防線が
必要なんですが、ほとんどありませんでした。

また、この結果から、「ブランドはそもそも高いからブランドなんだ<ブランド
品は安くゲットしてなんぼ」、という庶民の意識が強いんだと思います。
これは皮肉なことですが、アウトレットモールの数が増えてきていることと関係
があると思います。アウトレットが悪いんじゃないんです。それに便乗して偽ブ
ランド品を売る業者と、アンチ偽ブランド品の精神をうまく啓蒙できていない
行政です。とはいえ、もちろん僕も含めて、買い手が日々賢く買えるよう
学んでいかなければならないことも、ここで言っておきます。

posted by No.9 at 18:17 | Comment(2) | TrackBack(0) | 分析(統計解析) | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「価格」と、ブランド品に関する「知識のなさ」に焦点をあてている前提と、そもそも1と4の質問がよくない気がする。

とくに1の質問、値段で偽者だと判断しろというのは無理があるのでは?質屋のセールかもしれないですしね。
4も費用で比較していないので、もしかしたら1円の差しかないかもしれないと考えられる。それなら、本家になるはずだし・・・

あと、仮説をたてた場合は
分析してもいいけれど、検定して正しいことを証明するべきじゃないのかなぁ・・・
母集団が少なくて偏りがあるという時点で何の意味があるのかわからないけど(笑)



個人的にブランドのほうが、定番で長持ちするという認識もあるけど、これも偏見なんだろうな。
Posted by MIR at 2008年11月28日 22:43
>MIRさんへ

検定ですか、確かに載せるべきといえばそうですね。一応p<0.05で有意です。ただ、いろいろ載せるのもアレですし、どれを載せるかというのも考えているところなんですよね。
今は分析そのものの過程を超簡単に載せているだけなんです。記事も短くなるし。

コンジョイント分析は、少ない数でもできるのが魅力なので、あんまり検定まで載せると
読み手が疲れちゃうかなぁと思って避けていました。

質問に関してはご指摘ありがとうざいます。これからの糧とさせて頂きます。
Posted by 武欄堂 at 2008年11月29日 13:52
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