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2009年10月09日

英国が考察する、日本経済とファッション消費への価値観の変化   

■経済問題と集団よりも個人を選ぶファッションの消費行動

前回のNY timesのほかに、英国のメディア、timesonline.co.ukでも、
日本経済と日本人の価値観の変化、特にファッション消費の変化につい
て書かれているので簡単に意訳してご紹介したいと思います。

NY timesが、「デフレ(値下げ)と倹約のジレンマ」がテーマであったのに
対し、timesonline.co.ukのキーワードは「経済不況」「"カッコいい"の価値観
の変化」、そして、「脱・従属意識」となっています。

 

 

Age of Bling is over as Japanese dress down/timesonline.co.uk

■【高級ブランドの撤退から見る、日本国内のファッション産業と経済】■

かつて、とてもよい商品を売る高級ファッションブランドにとって、世界中で
最も頼もしい買い手だった日本の消費者は変化しました。それは基本的
に「よくみえる」という概念が変化したことになります。

世界で第2位の経済大国である日本において、ヴェルサーチが事実上の
撤退に追い込まれました。

アナリストは、このヴェルサーチの閉鎖が日本全体へのシグナルである
と考えています。それは、いわゆるかつて多くの裕福な消費者の欲しい
ブランドリストから、日本人が拒絶したということです。

あるいは、野村証券金融経済研究所、主任研究員の正田雅史氏によれ
ば、「日本人が着た、あるいは、彼らの腕で運ばれ日本において君臨して
いたヨーロッパのメガブランドは、縮小しています。それに代わり、絶えず
ラインナップを変え、適度な価格のブランドがその地位を引き継いで
います」と彼は述べています。

かつて、日本の大都市の最も地価の高い通りを支配していた他の強力な
高級ブランドも後退しています。シャネルは、大阪の中心にあった店舗を
閉じました。ルイヴィトンは銀座の巨大な旗艦店オープンの計画を断念
しました。3月には、ヒューゴボスは青山にある本店を閉店させました。

状況は深刻です。2008年のインポートブランドの日本市場では、前年
よりも10%売上が落ちました。矢野経済研究所のアナリストによると、
2009年はさらに下がると予想されています。

公式な統計と、店主たちが口を揃えて言うのは、この問題の根本は、
「経済」にあるということです。グローバルな財政危機は、日本の銀行に
とっては致命的ではないけれども、景気後退の余波は消費者の信用に
破壊的な一撃を与えました。というのも、日本人の平均給料は、15ヶ月
連続で減少。そして、完全失業率は最高値に近いところまで上昇してい
ます。

不景気に突入した、1990年代の厳しかったときでさえ、贅沢で金に糸
目をつけなかった日本人の買い物客も、今回はファッションに費やす
お金の考え方が以前とは異なるかもしれない・・・と決断しています。

 

 

■【日本人消費者の心理の変化 「従属・見栄」から「個人」へ】■ 

しかしながら、こうした消費者のファッションに対する変化が、全て直接
「経済」のせいだけとはいえません。日本のコンシュマーリズムの専門家
いわく、「日本人は消費に対し、より慎重になっていったが、脱高級ブランド
という志向へと、とにかく向かっていったこともある」と考えています。
ユニクロ、GAPなどのファストファッションは高級ブランドとの垣根を失い
ました。

CLSAのアナリストである、ジーニー・チェン氏いわく、ユニクロの場合は
ブランド認知(知覚品質)が「ださい」から「カッコいい」に抜本的にシフト
したと述べています。また彼女は、日本のアパレル市場はこの構造変化
を経験してきた、とも述べています。

日本国内のファッションのテイストも変化しています。見せびらかしのキラ
キラ光るものは一部の富裕層の間で人気でありますが、日本人はその魅力
を感じていません。ヴェルサーチがその代表。

クレジットセゾングループの会長、Hiroshi Rinno氏は、国内の購買パターンが
デモグラフィックな面と経済問題を超えて激動のフェーズに入っていると考え
ています。今の日本の社会において、「十分買った」という満足感が特筆すべ
き要因ではないと考えています。

Hiroshi Rinno氏は述べます。「私は、消費者自信が変化したと思います。
これまでは、日本の消費者は何かに属する従属意識に関して願望を持って
いました。皆と同じものを持ちたいという願望は、商品をブランド化していきま
した。しかし、今ではそのような社会性、あるいは準拠集団によって影響
され動機づけられるということはありません。」

日本における消費心理は、彼、彼女が選んだからというより、「個人として
何を選ぶか」となっていますと、Hiroshi Rinno氏は述べています。

以上です。最初は経済問題から始まり、後は消費者の心理的な変化2つ。
1つは高級ブランドとファストファッションのイメージの差があまりなくなって
いる、認知心理学的な側面。もう1つは、集団より個人といった社会心理学
的な側面をあげています。

NY timesが主張するのと同じところは、「脱ラグジュアリーブランド」という
こと。一方で、NY timesが主張する倹約ということよりも、timesonline.co.uk
では冷めた見方。値下げという表現よりも、高級ブランドへの欲求、憧れ、
願望というものが、ここ数年で下がっていったということがあるかと思い
ます。長くなって申し訳ありませんが、NY timesにしてみても、timesonline
にしても日本のネットニュースよりもかなり詳細に書かれています。ただ
処方箋的な内容にはなっていないので、価格のバリューゾーンとか、
個人的には日本のネットニュースで、この難題に対する答えが知りたい
と思いました。

関連:NY timesが考察する日本のファッション産業と経済不況 

posted by No.9 at 22:35 | Comment(3) | TrackBack(0) | 議論 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ヴィトンとかださいっていう30代女性の方結構います。

従属から個人っていうのはある意味で良い方に向かってきたようにも思いますね。

マニュアル的販売よりもそれ以前の根本的な人と人とのつながり、関係ってのが重要になってきてる気がします。

接客が難しい時代です。
Posted by 地方販売員 at 2009年10月11日 00:00
>地方販売員さんへ

>接客が難しい時代です

おっ、これは販売員の方でないとわからない考えですね。勉強になります。ありがとうございます!
Posted by 武欄堂 at 2009年10月11日 00:18
不況もそうですけど、販売員のスタンスやマニュアルのあり方も変えていかないといけないのではないか?とも思います。

売る事や技術は仕事である以上とても大事ですけど、それ以前にファッションに大事なものは売ることじゃなくてお洒落を楽しむ事ってのを忘れてはいけないなぁと。

なんか個人的な思い語っちゃってすいません(汗)
Posted by 地方販売員 at 2009年10月12日 01:28
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