■モードブランドに若者は帰ってくるのか、ストリートテイストの秋冬
広告枠を取るために奔走するファッション誌、さらに休刊も相次ぐ事態。なにを買ったらいいのかわからないバイヤー。経済不安とともに、なにかファッションの方向性、姿勢自体も見えてこない昨今、だからこそあえてこの特集をやる意義がある。と、無理やり自分を鼓舞したところでランキングを発表するわけですが、モードブランドの秋冬はアメカジやミリタリー、アウトドア、ワーク、ロックという今ストリートでリアルに流行っているテイストを拝借してブラッシュアップしたものだと思いました。またその辺WWDでも書かれています。その工夫、ウケも考えて単価の高くなる秋冬でもあえてモードブランドを入れるようにしました。スタイルは完全にカオスですね。流行るというのは売上でも、口コミでも、ファッション誌でもネット検索でもなんでもアリ、という前提で、私の独断で決めています。では、どうぞご覧下さいませ。
順位 |
ブランド名 |
備考 |
1 |
ビズビム |
モンクレールVも登場、キムタクも着用 |
2 |
ランバン |
素材、デザイン、世界観で新しいハイストリートファッションを提案 |
3 |
ホワイトマウンテニアリング |
ゴアテックス攻めという印象からモードテイストが強くなる |
4 |
ラグ&ボーン |
2010CFDAアワード受賞 |
5 |
バーバリープローサム(ブリット) |
ハイストリートのプローサムと廉価のブリットは、万能で秀逸 |
6 |
ユニクロ |
売上が伸び悩むもコーデに1つは入れる人多し、再び脇役に? |
7 |
ニューバランス |
1300復刻+コラボで今年のスニーカーオブザイヤー? |
8 |
ドリスヴァンノッテン |
ブリトラをベースに、ストリートテイストに |
9 |
タカヒロミヤシタ・ザ・ソロイスト |
元ナンバーナインの宮下貴裕氏の新ブランド |
10 |
ドクターマーチン |
創立50周年、ハローキティともコラボ |
11 |
H&M |
東京だけでなく関東、全国に拡大中 |
12 |
トムブラウン |
東京に旗艦店が登場予定。安くなったのはでかい |
13 |
バンドオブアウトサイダーズ |
今季はアウトドアスタイルで勝負 |
14 |
無印良品 |
日本最古のファストファッション、若者の間で人気 by men'FUDGE8月号 |
15 |
サカイ |
インターナショナルギャラリーにメンズ専門のショップインショップが誕生 |
16 |
ケイスリーヘイフォード |
返ってきたロンドンブランド |
17 |
スズキタカユキ |
東コレ常連、天然でシンプルデザイン、まさにジェンダーフリー |
18 |
フェノメノン |
初の東京コレクション参加で話題のストリートブランド |
19 |
ジュリアーノフジワラ |
ストリート×モードの祭典、海外では侍と評価高し |
20 |
ボッテガ・ヴェネタ |
ろくでなしブルースも驚きのリーゼント!ロックンロールで鬼高も吹っ飛ばせるか |
●2010-2011A/W定番行きブランド
ベドウィン マーカ ワコマリア ジョンローレンスサリバン メゾンマルタンマルジェラ ヴィヴィアンウエストウッド イヴサンローラン リックオウエンス アタッチメント リップヴァンウィンクル GAP ラルフローレン マーカ ノンネイディブ バーバリーブラックレーベル ポールスミス コムデギャルソン関係 ディーゼル ハレ ヴァンキッシュ ラッドミュージシャン N.ハリウッド アンダーカバー ノースフェイス パタゴニア wjk(AKM、ジュンハシモトも含む) インパクティスケリー エンジニアードガーメンツ ヌーディジーンズ サスクワァッチファブリックス モンクレール ニール・バレット |
☆☆時代は総食男子?☆☆
草食男子→装飾男子→総食男子・・・「なんでも食べる、なんでも取り入れる」、という思いを込めて付けてみました。本来、原宿を中心とした若者のファッションの原点は、あらゆるサブカルチャーを吸収したストリートの中から生まれるもの。それを、モードブランドが拝借して、ファストファッションブランドが孫借りするという様相を呈していると、今季は思うんです。「ストリートから拝借した逆輸入型スタイル」です。 特に、ジュリアーノフジワラなんかは分かりやすい。このパリ・ミラノコレクションのトレンドや、ドメスティックブランド、アメリカブランド、ファストファッションブランドなどの詳細は、流行るブランド予想2010-2011A/W:中間発表を読んで頂ければ幸いです。
簡単に言えば、裏原系には懐かしいチェックシャツや、ミリタリーブーツ、カーゴパンツ、ミリタリーブルゾン、プラダのカモフラバッグといったミリタリーテイストもある。さらに、バイカーブーツ、レザーライダースジャケットといったロック系、アウトドアをうまく当てはめるダンヒルやドリスヴァンノッテン、レイヤード仕立てのテーラードジャケットを提案したディオールオム、トラサルディ1911など、やっぱりルーツはストリートなんですよね。「男臭い」が増えているかな?こういったなんでも自由に取り込めるところが、この秋冬の面白いところ。主役は皆さんです。コムデギャルソンの防弾チョッキベストの下にスカートを履いても、それは新しい試みで面白いと思われるかも知れない。「+J」のシャツにプラダのカモフラ柄バッグもありかもしれない。一方で、POPEYE8月号にあるように、服のジェンダーフリーも無視できない。カーゴパンツなどのミリタリーアイテムもレディースを着る男性も出てくる可能性があります。いろんなものをチョイスして自分のものにしてしまう。いろいろ試食してみてください。その中でバランスの良い献立、つまりコーディネートができます。 それが「総食男子」だと思います。ということで、その辺のチョイスに使えるブランド、話題のブランドを選んでみたわけです。
■ランキングの背景
◎ファストファッションは主人公から再び名脇役への転換期か
・1位から5位まで
ファストファッションではユニクロが6位。これがファストファッションでは最高位。ユニクロに陰りが見え始めたことも無視はできませんが、それでも脇役として皆が新商品を買っているはず。それがUJなのかシルキードライなのか、「+J」なのかはわかりません。とりあえず、バブルのように盛り上がったファストファッション第一次?全盛期に、1つの節目を迎えるときが来たかな思いました。ファストファッションが表舞台に立つのは、なんだかんだコラボ次第という側面があることが無視できないことも指摘しておきます。
1位から5位まではほとんど差はありません。ただビズビムの人気は、今最高潮なんじゃないでしょうか?月9ドラマでキムタクが着用して、ビズビムのブーツの認知度はさらに拡がりました。ドラマ「HERO」で、キムタクが着たエイプのダウンジャケットの争奪戦が懐かしいところですが、ビズビムのブーツも負けていません。ヤフオクでは20万円近くで取引されています。しかし、そういった一瞬のにわか的な人気ではなく、渋いアイテムのクオリティは高く、世界での評価はどんどんあがっているようです。モンクレールVでコラボを行うこともビズビムの成長に大きく貢献することでしょう。というわけで、1位。
ランバンに関しては、コレクションが完璧、というほかありません。僕の中では最高傑作と言いたいくらい素晴らしいものでした。上述のあらゆるストリートファッションのミックスを、ルカオッセンドライバーとアルベールエルバスのフィルターを通したデザインにすると、未来で生きるためのプロテクトアイテムに変身。細身にシェイプされたシルエットのカーゴパンツ、メンズノンノ8月号いわく、極端なシェイプで中性的なスーツにも注目していますが、ジェンダーフリーでもある一面を感じます。
ホワイトマウンテニアリングはずいぶんキャッチーになりましたね。2010S/Sのときのような、アウトドアをベースにしたものというよりは、コム・デ・ギャルソンやヨウジヤマモトのような非構築的で色合いも鮮やかなブルー、レッドとモード寄りになってきている印象を受けました。良いか悪いは別として売れるのではないでしょうか?
ラグ&ボーンは、今年のNY系ブランドのトップでしょう。アメリカファッション業界のオスカー賞にあたるCFDAアワードを受賞し勢いがあります。デニムだけでなくチノパン、ワークシャツのクオリティも良いという評判を聞きました。自分も実際見ましたが、今年来るんじゃないかなぁ、と思い上位にランクイン!
バーバリープローサムのボリュームのあるコート、レザーアウター、ブーツなど値段が鬼のアイテムが売れるかどうかはわかりません。もう少しカジュアルで低価格のバーバリーブリットが銀座店で取り扱いとなりましたので、お互いの相乗効果で人気が出てもおかしくないと思っています。秀逸なスタイルを提案したクリストファーベイリーですが、ネットを用いたマーケティング戦略にも力を入れていて、様々な年齢層の男性の心に響くのではないでしょうか?
◎今年のブランドから復帰したデザイナーまで
・6位から10位まで
ここからは、簡単に紹介していきます。ユニクロは、上述のように5位に入れなかったけど6位ということで。先シーズンからはダウンです。ニューバランスは定番ですが、今年に限りランクイン。25周年記念と1300が復刻したことにより人気が上昇。ジュンヤワタナベとコラボしていましたが、それだけでなくフットザコーチャーやAKM、オッシュマンズとコラボしたり大忙し。スニーカー・オブ・ザ・イヤーではないでしょうか?ドリスヴァンノッテンは柄が目立つところですが、今回はブリトラをベースにしてアウトドアとテーラードミックス。さらに色合いをはっきりだしてきたところなんか、非常にストリートで映えるのではないかと。タカヒロミヤシタ・ザ・ソロイスト・・・どうせ皆欲しいんでしょう(笑)?でもお値段なかなか高いですよ。ドクターマーチンも定番ですが、今回特別ランクイン。創立50周年記念でハローキティとコラボ。一体ドクターマーチンは何回コラボをすれば気がすむんだと。
◎トムブラウンの逆襲、始まるか?
・11位から16位
2011S/Sからパリコレクションに移り、それなりのインパクトを与えたトムブラウン。中田英寿さんなどのファッショニスタもワールドカップでシャツを着ていましたね。お値段も昔よりも安くなり、デザインも以前ほど奇抜ではなくなりました。ただ、2010-2011A/Wの最後のNYコレクションではやらかしていましたが(笑)。ともかく、近いうちに東京に初の旗艦店がオープンする予定になっています。不死鳥のごとく蘇ったネオアメトラの鬼才は、どこまで日本に旋風を巻き起こすことができるか気になります。バンドオブアウトサイダーズは、もう定番入りしてもいいかと思いますが、今回だけ入れました。ノスタルジックなアウトドアを提案した今季。それに、高級チノパン、ネクタイが気になります。無印良品は、men's FUDGE8月号いわく、今若者の間で人気ナンバー1。まさに名脇役ながら、あのミニマルな佇まいとデザインに、魅力を感じているのでしょうか。日本で最古のファストファッション、期待です。サカイは入れるかどうか迷ったのですが、メンズ専門のショップインショップをインターナショナルギャラリービームスにオープンさせたこともあり話題になるかも、と思いました。しかし、値段が難。POPEYE8月のように、レディースから立ち上げたブランドとしてジャンダーレスな着こなしが好きな人にも人気あり?
◎この先どう健闘するか、というブランド達の激闘
帰ってきたケイスリーヘイフォード。祐真朋樹氏もお気に入りのようで、POPEYEがしばしば特集組んでいますよね。パンク×サビロー仕込みのテーラリングが得意な親子がどこまでくるか。比較的お手頃価格で、アウターなどが売れるのではないかと。スズキタカユキは高めですが、一部からは人気はかなりあります。クチュールライクな細かい仕事がお見事。フェノメノンは東コレデビュー。リアル北斗の拳ここにありー!とBIG-O氏が言ったかどうかは分かりませんが、インパクト大でした。日本のストリートファッションをワビサビとして紹介したジュリアーノフジワラは、世界で話題になっていますが日本でもある程度反響があるんじゃないかと思っています。ネルシャツ、切り替え、プリーツスカートはスケバン刑事状態です(笑)。ジェンダーフリーな若者の間で人気が出そう。ボッテガ・ヴェネタは、50年代のポマードバリバリ、ミリタリー、バイカーブーツ、レザージャケットが冴え渡る。が、値段が鬼すぎ。
◎最後に
残念ながら、ジバンシィ・バイ・リカルドティッシ、アレキサンダーワン、アレキサンダーマックイーン、ディスカバード、kolor、Jサバティーノ、トップショップ/トップマン、スリーブラインドマイス、フィグベル、3.1フィリップリム、ロバートゲラー、リチャードチャイ、ソフネット、マーガレットハウエル、バルマンオム、ミハラヤスヒロ、トローヴ、08sircusが入れられませんでした。残念。
2010S/S流行るブランド予想では、ずばり「経済面」を考えて分、今回は強気にインポートブランドもドメブラも積極的に入れました。反動みたいな側面もありますが、はじめに述べたように「総食時代」だと思うんです。ストリートに馴染んでいたミリタリー、ロック、アウトドア、ワークを拝借してモードを昇華をさせる時代。1つのアウターで大胆な切り替えをするハイブリットを行う時代でもある。いろいろなテイストを、自分のものにできるのが2010-2011A/Wだと思うし、そうすることがあって然りだと思っています。皆さんが主人公。女性のブラウスの上にレザーライダースジャケットを着ちゃいけない・・・なんて誰も決めていませんからね。極端な例ですが(笑)。なかなか難しいですが頑張ってみました。
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トレンドが分かりやすく生まれない分、それぞれのリアリティでそれぞれのファッションを選ぶ時代なんだろうなーと思います。
でも、それって本来あるべき自由なファッションの姿でもあると思うので、今回の経済的不況は、個人的としては初期衝動に変えるべきタイミングにも感じています。
自分がワクワクできるブランドやデザイナーの感性、それを探すことももちろん、着た時にビシッとはまった瞬間の楽しさとかそういうのが今また大事というか・・・ビジネスにファッションが呑まれすぎてたように、最近思います。
長文失礼しました。
今後とも楽しみにしてますので。
>総食男子・・・同感です(笑)
ちょっと安心(笑)。