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2011年08月13日

服を定価で買うのが馬鹿らしいのは、ワクワク感がないから  

■アパレル産業だけではないセールの落とし穴 価格志向から未来志向に

ネットで、アパレル産業のセール乱発に対する記事が盛り上がっております。 個人的には、セール自体否定しないし乱発は嬉しいのですが、ビジネスとしてはダメダメの印象。というのも、セール頻度が多くて値引き率が高いと、皆さんの「これくらいなら買ってもいいよ(内的参照価格)」という価格が下がってしまうんです。これは長い調査で実証されていています。

 

 

【本記事の簡単な流れ】

◎セール乱発がいけない理由

セール乱発⇒価格の感覚が麻痺しセールのありがたみを忘れる⇒セールでないと皆が買わなくなる⇒それが固定観念となり価値観へと変わる

◎セール乱発を防ぐ方法

セールに変わる「買いたくなる」刺激を与える⇒「定価」で買うことにためらいを与えない⇒買うときがゴールではなく、買ったあとの消費者の未来像を見せてあげる

結論として、この流れとなることをこれから詳しくご紹介していきます。

 

 

 

 

【定価で服を買うのは馬鹿らしい?を整理してみる】

もう「通常価格」が信じられない-セールの乱発で消費者が離れるアパレル業界/日経ビジネス

セールの多発化や早期化は、本当に消費者の購買意欲をかき立てるのだろうか。
一消費者の立場で見ると、「こんなにセールが多いなら、今慌てて買う必要はない。もう少し安くなってから買おう」と感じてしまうし、何より通常価格に対する信頼を失う。
(中略)
しかしその結果、通常価格で売られる期間が数日しかない商品もあるという。うがった見方をすれば、通常価格はもはや、まやかしの価格とも言えるのではないだろうか。低迷する衣料品業界にあって、セールがカンフル剤となることは十分に理解できる。しかし回数が増えすぎれば、それはもはやカンフル剤としての役割を果たさなくなる。セールによって来店客数や売り上げ点数こそ増えるが、単品当たりの単価は下がり、利益率も減る。そして消費者には通常価格への根深い不信感と、セールを前提とした新たな「適正価格」がすり込まれていく――。
セールの乱発による消耗戦を続けることは、売る側にとっても、買う側にとっても決してメリットにはならない。ならば、一度ゆるめた蛇口は再び閉め直すべきである。売上高が前年実績を割ったとしても、歯を食いしばってセールという麻薬を絶つ。そしてセール以外の知恵で、消費者の買い物意欲をかき立てる。

ライブドアオムで、上記の記事に対して南充浩氏は至極当然だと話されています

セールなしで、来年の6月に、今年の6月実績を越えるような販促ができるブランドがどれほどあるだろうか。おそらくほとんど存在しない。

各企業とも年間計画のベースは「前年実績準拠」だし、人材への評価基準もすべて「前年実績を更新したかどうか」である。今夏の異例に早かったセールについて「非常事態への対応だから常態化しない」とのご意見を見かけることがあるが、これは甘いと思う。

この記事で、2ch系サイトも大きく取り上げております。定価で買うのがバカらしいもの、それは洋服…迷走続けるアパレル業界

さらに、最近伊勢丹のアウトレットが御殿場プレミアムアウトレット内に限定オープンしておりますが、百貨店特有の商取引である消化仕入れへの依存から脱却し、買い取り比率の向上を進めているため、将来的には本格出店する模様。継続的に在庫処分方法を確保していくのが理由です。

 

 

 

 

 

上記のように、前年実績を上回る短期的な目標が、結果的にセール乱発を引き起こすということが指摘されています。しかし、アパレル産業のセールの乱れ打ちの原因はもっと根深く、企業のあらゆるマーケティング努力不足なんだと思います。セールという企業の都合の一部を問題視しているだけでは、その視点こそが近視眼的かなと。

そこでですね、逆の発想で『定価でも消費者が買いたいと思うにはどうするか?』という考察があれば、面白いかなと思いまして。今消費者は、セールが心地よくなって、セールでワクワクして、定価で買った人が馬鹿を見るという構造になってしまっていますよね。その構造を変えるにはどうするか、という記事を書いてみようと思います。

アパレル産業だけの問題ではないですが、強いて言うなら、Elasticが指摘されているような、定価でも買えるようなよいものを探すという、買い物自体の醍醐味を、提案する方法論を定着させるのも重要な考えだと思います。ちょうどルイヴィトンがECサイトじゃなくて、「直営店に行こう」的な書籍を出版しますが、それにもつながると思いますし。



南充浩氏は、『セールなしで、来年の6月に、今年の6月実績を越えるような販促ができるブランドがどれほどあるだろうか。』とお話されていますが、ないことはないはず。ルイヴィトン、シャネル、エルメスなんかは(例外もあるけど)、ほとんどセールしないでなんだかんだうまくやっているでしょう。 ルイヴィトンは、腕時計、アクセサリーに限り、むしろ値上げしました。

ほかに、ミクロ単位ではありますが、経験談をいうとに、イーストパック×クリスヴァンアッシュを本ブログで紹介したら、バックパックがあっという間に完売。これは定価です(日本より安いみたいですが)。私自身のブログに影響力があるとは思っておりませんが、閲覧者が適正価格だと思ったかもしれないし、何かを感じたかもしれない。たぶん再入荷しても、また完売すると思います。だって・・・普通に欲しいデザインだったし(これは私情 笑)。

さらにいうと、クリスチャンルブタンの10万円するシューズが、不況にも関わらず直営店でよく売れているということをお伝えしました。セールしなくても売れるときはあるし、不況だけのせいにできないんですね。

以上から、「不況だけど前年実績を上回らければ。それから、在庫を減らさないと⇒セールという選択肢」という、安直な価格戦略に飲み込まれなくても済むという方法もあると信じています。





【ポイントは不況のせいにせず、お客の未来を売ること】

ここからは、さらにマーケティングのお話になりますが、難しい用語をなるべく使わず簡単にまとめたいと思います。

書籍消費行動の社会心理学 と、消費者の価格判断のメカニズム―内的参照価格の役割「買いたい!」のスイッチを押す方法買い物する脳 などを参考。

●いきなり結論

売り手は、買い手に買いたくなるような「ワクワク感」を与えること。それから「ワクワク感」を生むきっかけを常に放出し続けること。これは価値観、ニーズの多様化といった生活者のライフスタイルの変化の影響をほとんどうけません。さらに、産業の違いにも影響をうけません。



ワクワク感とは何か。

「目新しさ」「いつもと違う惹きつける」「モノ・サービスの裏側に何かしらストーリーがある」「共感できる」「買い手が売り手に協力(創発)」「既存+既存=新しい発見」とか、生活者の「人生」「未来」に何かしら影響を与えることです。それは商品・サービスを通して「未来の生活者の姿」が見えてくることにもなります。

人の脳には、「記憶のしおり」「記憶のショートカット」のような働きがあると言われています。そこに、商品・サービスを買いたくなるような「ワクワク感」を喚起してつないであげることです。方法はあり過ぎるくらいあります。

そもそも、金持ちでも貧乏でも買いたいものは買いたいし、買いたくないものは買いたくないのです。問題は、その後で買えるかどうかを判断するという2つのステップで、まず「買いたい」というスイッチをONにできないと次に進めない。非常に単純ですが奥が深い。

 

 

 

上記書籍から1例を:

「買いたい!」のスイッチを押す方法のお話::非モテで普段服にお金を出さない男性が、本気で婚活を始めました。服は安いものをいつも買っていますが、これはマズイと思い、知人に連れられセレクトショップに。見たこともないイタリア製のジャケットとパンツを選択。桁違いの価格に驚くものの、抵抗なく購入。

後日、お直しが終わったセットアップが家に届く。男性はどう思ったか?

「キター!」と思ったそうです。嬉しかったというわけですね。服に興味がなかったのに。

この一連のくだりには、「ワクワク感」と「記憶のしおり」がつながっている背景があります。「動機づけ」とも言います。それは何か。勝負服で彼女をゲットし結婚することです。服は時に人に自信を与えます。イタリア製のサイジングのあったセットアップ⇒ちょっとはモテるのでは?(記憶のしおりからの贈り物)⇒よしいくぞ!充実感、充足感がある。これがワクワク感パワーです。

さて、この例をさらに発展させて個人的に思うのが、貸衣装サービスをしても面白いのではないか、ということ。どうも、10万円以上出するのは・・・という男性に婚活用のセットアップをサイズ、デザイン別に用意する。こういうことを行っている百貨店がどれくらいあるでしょうか?あんまりないのでは?

「服」を通して、結婚したい男性と女性をつなぐ。十分ビジネスチャンスだと思います。必要があれば婚活のサービスも入れればいい。どんどん生活者の未来を創っていくことができるし、結婚したい人には効果的かもしれない。





【価値観の変化も見てみる 81年以降の調査】

●バブル期から崩壊までの10年間(81-91)

書籍の調査では、81年から88年まで日本人のお洒落化、海外志向、現在志向(今が良ければそれよし)が一気に進むが88年で頭打ち。91年からは、徐々に生活簡素化志向の堅実派が台頭。

バブル期から不景気に突入するところです。当時の20代の若者の間では「自動車」「AV家電」「海外旅行」が三種の神器。ものすごく高価でしたが、流行として拡大。この時は、価格が高いほうを選択する志向があったようです。今では逆ですよね。価値観だけなら真逆の印象。





●若者の◯◯離れは、企業が離しているだけ

上記のバブル期からの価値観調査の流れの先を考えると、行き着くのが極論ですが、いわゆる「嫌消費」とか「若者の◯◯離れ」というものです。有名なのは「車離れ」ですね。そして、酒、タバコ、テレビ、活字離れともうたくさん。高いものを買うのは馬鹿馬鹿しい、ダサい、古い。

確かに、考え方によってはそうかもしれない。IKEA、ニトリ、ユニクロ、ABCマート、ネットカフェ、松屋、マック、ドンキホーテなど・・・で、衣食住が事足りる可能性もあるでしょう。そういう時代です。昔は、数十万したPCも、メーカーを選ばなければ5万円以下でハイスペックが買える時代。無料ソフトも充実。

お給料の話でいえば、日本のサラリーマンのたった3%が年収700万円以上。そして、1000万人が年収200万円以下です。

それでも、上記のように、高いものでも売れるものは売れます。ご存知、アニメ市場は、まだまだ元気だしアメーバのように産業を越えて拡大しています。ファッション、音楽はもはや普通。この拡大は、何が起こるかワクワク感につながると思うんですね。コミケは日本の経済を支えています。

車は買わないが、百万円以上するハーレーダビッドソンは買う。こんな人もいるみたいですよ。移動するのは一緒なのに。 こういう消費者は「定価」に目が行っていないんですね。所有し行動することをイメージしているんです。そういうふうに人の心を動かせば売れるんだと。

産業をガラっと変えて、もっとディープなお話をしましょう。







●Appleは大きなセール、値引きをしない

アジア企業の参入で値崩れが進むPC、周辺機器市場。しかし、Appleはどうでしょう?値崩れしにくいでしょう。というか、値引きしても値崩れしているショップを見たことがないんですが、セールをする必要性がそもそもないブランドです。iPodは音楽業界のみならず、あらゆる産業に影響を与えた小さな白きモンスターです。これをデザインしたスティーブ・ジョブズが天才なのは言うまでもありませんが、できた背景は意外と単純です。

ジョブズいわく、当時街中で若者が白いヘッドホンを耳にして機器をポケットに入れていたことから、「カッコイイね。普通黒だけどちょっと違うだけでここまで印象が変わるんだな、これは行けるぞ」と思った。この一種の擬似体験(ミラーニューロン)こそが、革命の始まりだったと述べています。未来の自分、お客がワクワクしているところが見える。

ありふれた、日常の些細なことからインスピレーションを得てデザインする。メゾンマルタンマルジェラにもつながるような印象なんですが、スティーブ・ジョブズはデザインをデザインする人物として、生活者にどんどんワクワク感を与えるんです。だから、お金を貯めてほぼ定価で買う価値があるんです(例外もありますが)。

以上の例を、あれは別格にしたはダメなんです。これが今のマーケティングの成功例として、企業は肝に命じなければなりません。





【最後に:21世紀を生き抜くようなワクワク感を広げよう】

話をもどしてファッション業界。実は価格戦略、ブランドイメージとしてセールを乱発するのは良くないことは、アパレル企業はどこも知っています。でも、背に腹は代えられぬ思いでセールを行っているんでしょう。そのリスクを背負うなら、セールではなく買いたい商品に仕向ける努力に変えたほうが、よっぱど価値的だと思います。

具体的な例。以前にも書きましたが、日本のそれぞれ産地を大事にして、そこでしか手に入らない服を販売して価格で勝負しない体制を整える。岡山のジーンズや京都の西陣織、生地の産地一宮市あたりは有名ですが、地方にはほかにもたくさんあります。能登の天女の羽衣なんかも、地方がが生んだ世界に誇る糸です。それを百貨店、デザイナーとタッグを組んで販売する。婚活のくだりの流れで例を出すと、ウェディングドレスでも面白いかも。天女の羽衣のウェディングドレスから最高の結婚式をイメージしてください。可能かどうかは別にして、素敵な感じがしません?女性はワクワクするのでは。一生に一度なんですから高くても使うかも。

そのようなワクワクの連続を提供できるかどうかが、消費者の気持ち「その他の要因>定価」につながるかも。

オチとしては、セール乱発前から安くブランド品を買う方法を模索していた私の立場として、自己矛盾しているのですが、あくまでビジネス記事として書きましたので、ご了承のほどを(苦笑)。

【関連】

格差社会と言われてから今日までのファッション市場のあらまし

英国「日本の若者は高級ブランド品に対して財布の紐を閉めている」

英国が考察する、日本経済とファッション消費への価値観の変化

英国考察:ファストファッションは今後消滅していくだろう



posted by No.9 at 20:30 | Comment(7) | TrackBack(0) | 議論 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「今シーズン(2011SS)は好調で、もう売るものがなくなっちゃいそうです(苦笑)」と2月ごろに覗いたPRADAのスタッフの方が仰っていました。

今シーズンのPRADAはシーズン前から評判が高く、プロダクトの好評価がそのままセールスに繋がった形です。今回お話に挙がった「良い物は売れる」の典型例ではないでしょうか。
Posted by zam at 2011年08月13日 22:53
物理的には数年は使える商品が、発売後3カ月で半額になる。
10万円以上も値引きされる商品も少なくはない。
ほかの業界と比べると異常ですよね。

ECショップやアウトレット専売品など、アパレル業界はひたすら「安く、多く売ること」を目指しているように見えます。
明日の生活が懸かっている当事者からすれば「付加価値ある商品を作ろう!」なんてこと言ってられないんですかね。
とりあえずは薄利多売でしのいで、価値づくりはじっくりと、ということかもしれませんが。

Posted by 平安 at 2011年08月14日 01:33
>ルイヴィトン、シャネル、エルメスなんかは(例外もあるけど)、ほとんどセールしないでなんだかんだうまくやっているでしょう。

セール乱発の話は国内アパレル産業の話ですよね?
欧米の高級ブランドを引き合いに出してますが、事情が違うと思います。
ルイヴィトン、エルメスなんて洋服は売れてないのに、バッグ事業の利益の余力でブランド箔付けのコレクションしてるんじゃないかな。
国内ブランドには真似できる芸当じゃないですよね。
Posted by エビス at 2011年08月14日 04:03
よく知らないけどマスターマインドとかは売れてるんじゃないかな?いや本当よく知らないけど。笑
Posted by at 2011年08月14日 05:56
>zamさんへ

ブランドの先にミウッチャ・プラダとアイコンタクトぉ!

>平安さんへ

自分達の生活のために自分達の首をしめてしまっている悪循環はあるかもしれません。

>エビスさんへ

すいません、わかりづらくて。日本市場全体です。NYの5番街とかブティックでも結構70%OFFとかやっていますよね。

>名無しさんへ

マスマイは、コアなファンで保たれているところを見ると、独自路線かもしれませんね。芸能関係者は120万円のコートとか買うようですね。

Posted by 武欄堂 at 2011年08月14日 13:51
ぶらんどうさんが最近店頭でプロパーで買ったものってありますか?
Posted by at 2011年08月14日 15:55
ギャルソンなんかはセール殆ど行わないですもんね。次来たときにはもうないかもしれないし、以前の商品はもう手に入らないと思うと皆さんプロパーしかも立ち上がりから並んで購入される方もいますものね。勿論コムデギャルソンというブランドのクリエーション、ブランド力があってこそだとは思いますが。長文失礼しました。ちなみに私はギャルソン信者でもなんでもないです。笑
Posted by マルセル at 2011年08月15日 05:31
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