■今後企業として知るための貴重な資料となることも
![]() | Pen (ペン) 2012年 2/15号 [雑誌] 阪急コミュニケーションズ 2012-02-01 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
発売される前から、Twitterの私のTLはこのネタでたくさんだったわけでありますが、もちろん私も買いました。買ってよかったとも思っています。個人的にコムデギャルソンは好きですし、謎の部分が多いので、知りたいという欲求にはかられるのであります。ただ、コムデギャルソンのクリエイション、川久保玲のデザインの歴史の部分は、他の方がたくさん書かれていますし、この雑誌を通して書評を公開する方もいるでしょうから、私としてはビジネスの視点で雑誌「Pen」からうけた印象を紹介したいと思います。
【良くも悪くも川久保玲氏はカリスマビジネスウーマン】
結論から言いますと、川久保玲氏はものすごいビジネスウーマンだと思うのです。もう、エネルギッシュですよ。デザインに関してはもう知りません、発言しません(笑)。
流通販売戦略、企業のイメージ、マーケティング戦略、組織戦略、人事・・・全部結果論でここまでよかったのか?感性、感覚だけで生まれてきた成果なのか?そんなことはないと思います。
ご本人と企業は、よく考えて意思決定をしていると思います。川久保玲氏は、データを重要視しない(これはカール・ラガーフェルドもよく言っていて、クリエイティブ・ディレクターという職種上、言わないのかもしれないけど)と雑誌「Pen」で言っていますが、市場調査に関してはしております、企業ですから。コムデギャルソンの営業力とリサーチ能力はすごいという・・・まあ、この辺にしておきます(笑)。
不況なのに、売れるのは少しずつ商品が変わっている(適応している)ことがありますよね。プレイコムデギャルソン、ブラックコムデギャルソン、コムデギャルソン×H&Mあたりは比較的安かったです。
川久保玲氏がビジネス志向の面もあるという事実、雑誌「Pen」で少しヒントをくれています。
『川久保玲氏のロングインタビューの中で。「ビジネスだって同じ、クリエイション」という発言があります。ほかに「ビジネス用、クリエイション用と分けて仕事を始めるわけではない - 初めから仕事の境界線がない - クリエイションとビジネスが同一であること」というものがあります。』
あんまり、こういった発言は見たことがなかったので不思議というかやはりというか。ビジネス面で責任を持つ、ということは社長として当然なんでしょうが、「クリエイションとビジネスは一緒」、ということを80年代、90年代のころなら堂々と言わなかっただろうし・・・なんて。
【アンチマーケティングというマーケティング】
以前にも書きましたが、私が思うコムデギャルソンのビジネスはアンチマーケティングというマーケティング戦略。
簡単に言えば、社会に対して挑戦的。喧嘩上等、いつでもハングリー、反骨精神むき出し!というイメージをどんどん拡大させていく手法。これは、アパレルのみならず、ほかの企業も見習うところが多いにあるんじゃあないかと。 ミーハー層も、服オタも吸い寄せる磁石のような存在は稀有。
こうなると、川久保玲を神のように崇めても、大いに叩いても彼女の術中にハマっています。朝日新聞デジタル:川久保玲さんロングインタビュー ファッションで前に進むは、大きな反響を生みました。はてなブックマークの数、リツイートの数でもそれを物語っています。その辺は、「1番を目指すから世界のトップクラス」 川久保玲ロングインタビューに大反響 を読んで頂ければと思いますが、6800回以上ツイートされています。なかなかない数字ですよ。朝日新聞ウハウハ(笑)。
この朝日新聞の記事を叩くコメント、エントリも出てきていますが、皮肉にも川久保玲氏の名前を結果的に拡げている宣伝屋さんになってしまいます。ですので、本記事も賞賛しようが叩こうが、コムデギャルソンや川久保玲氏の本質なんかには届かないので、せめてビジネスの観点から書いているわけです。
強いて言うなら、コムデギャルソンにとって弱点は今後になるのではないでしょうか。川久保玲氏の引退です。御大も70歳。若くありません。43年もの間、この人がいるから・・・というファンは多いでしょう。だから日本で根強い人気を保っていると思います。
雑誌「Pen」によると、コムデギャルソンの年商全体の約8割は国内だそうです。だから、国内需要が落ち込むと、売上そのものに大きな影響を与える。
そのためかどうかはわかりませんが、ここ数年で北京、韓国、シンガポールとアジアでも景気の良いところに旗艦店をつくりました。この辺は、本当に手を打つのが早いです。さすがです。
でも、弱点はやっぱりカリスマビジネスウーマンたる川久保玲社長そのものだと思います。10年後、20年後をどうするか?
【組織、人材、営業、拡張の絶妙なバランス】
◎16ブランド・イン・コムデギャルソン
雑誌「Pen」でこれは嬉しいな、という特集が「何がどう違うのか、全16ブランド完全解説」。コムデギャルソンに関連しているブランド(ライン)は16もあるんですね、全部分かりますか?
コムデギャルソン、コムデギャルソン・コムデギャルソン、コムデギャルソン・オムプリュス、コムデギャルソンオムドゥ、コムデギャルソンシャツ、ジュンヤワタナベ・コムデギャルソン、トリコ・コムデギャルソン、コムデギャルソン・ジュンヤワタナベ・マン、コムデギャルソン・オム、eYeコムデギャルソン・ジュンヤワタナベ・マン、ガンリュウ、プレイ・コムデギャルソン、ブラック・コムデギャルソン、ザ・ビートルズ・コムデギャルソン、コムデギャルソン・パルファムパルファム、ウォレット・コムデギャルソン
復活の呪文みたいになっていますが、これだけあります。雑誌「Pen」ではこれらのブランドを共起ネットワークのようなイメージ図とともに、各ブランドに関する情報をすべて載せています。これはありがたいです。もちろん、コムデギャルソンの設立からの歴史も年表とともに振り返る特集もあります。
この辺を読んで、1つの大きな組織からこんなに細分化されているにもかかわらず、うまく差別化しあっている(実際はどうなのか言い切れないので知覚マップ作りたいけど、多分ギャルソンの市場調査でしっかりリサーチ済みだと思われ)?というのが、驚きです。その差別化を生んでいるものとして、いわゆる暖簾分けです。
◎人材豊富なコムデギャルソン
いまや、1人でもカリスマ的な存在となっている渡辺淳弥氏。また、栗原たお氏、最近ファッション誌にも出てくるようになった、ガンリュウの丸龍文人氏など。 ほかにも、デザインチームに優秀な方がいらっしゃるようです。
コムデギャルソン出身者も、時代を超えて人材が羽ばたいています。ノゾミイシグロの石黒望氏、サカイの阿部千登勢氏、ホワイトマウンテニアリングの相澤陽介氏、ファセッタズムの落合宏理氏、ビューティフルピープルの熊切秀典氏。最近では、NAME.の清水氏もたしかジュンヤワタナベにいたはず。
この人材力こそが細分化されている各ブランドに主体性を出すことができる要素なのかなと。雑誌「Pen」では、社内デザイナーに対して川久保玲氏は口を出さないそうです。そのかわり責任は重いと。人材育成については非常に興味深い。
◎エグいまでのコラボレーション
ブランド拡張や、製品ライフサイクルを伸ばす(商品の陳腐化、コモディティ化を防ぎ寿命を長くする)という点で、コラボレーションはすごいですね。雑誌「Pen」でも紹介されています。
いままで、コムデギャルソン本体は、ヨウジヤマモト、ルイヴィトン、モンクレール、アンダーカバー、speedo、H&M、ビートルズ(オノ・ヨーコ)、芸術家、セレクトショップ、展示スペース(GYREなど)、家具雑貨、フォトグラファー、など、多岐に渡るコラボレーションを展開。シャツではおそ松くんやスターウォーズ。ジュンヤワタナベマンに至っては、毎シーズンオーソドックスでクラシックなブランドを再構築という形でコラボレーションしています。
最新では、3月16日にオープンするドーバーストリートマーケット銀座で、アベイシングエイプ、クロムハーツとコラボレーションする可能性があるようです。ちなみに、この内装に関しては本雑誌に掲載されています。
このような一連の仕掛けは、まさに縦の層として川上から川下×横のつながりである文化的側面(サブカル)、ストリート、ライフスタイルの世界も入っています。 これは43年もの歴史があればこそですが、圧倒的な包囲網。今言えるのはここまででしょうか。
というわけで、まあ長々と書いてしまいましたが、オチとしては本雑誌のドットを見ても、川久保玲氏はそろそろ草間彌生氏とおかっぱ頭の件も含めて白黒はっきりさせてもよいかもしれません。
コムデギャルソンはあくまで企業です。
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