■国をあげて脱中国生産の動き ヘリテージの流れはアメリカまでも
最近ちょうど、流れはアメカジからmade in USAへ?なんていう記事を書きましたが、アメリカ合衆国政府は、オバマ大統領の方針としてMade in USAを促進させることを一般演説で述べたそうです。昨年には、APECの場でmade in USAを買ってもらいたいことを本音として出したという話も。 それは、国内の雇用促進という意味が大きいんですけどね。
ただ、ファッションでいえば、いままさにアメトラ、アメカジの流れの中でMade in USAはいけるんじゃあないか?という空気もあったりするわけですよ。
20世紀の大量生産大量消費の時代で、重要な役割を果たしていたのは中国を中心とした生産コストの削減でした。服もその例外ではありません。でも、結果として技術は流出しアメリカ国内の技術者は減り、アメリカの伝統的な生産組織は縮小。21世紀になると、むしろ今のビジネスモデルが効率が悪くコストがかかるということが分かったそうです。
大手コンサルタント企業のボストンコンサルティンググループ(以後BCG)の見解では、中国の経済発展による賃金の上がり方と、輸出プラットフォームというコスト面で中国生産は優位ではなくなってきたと説明。その点で、アメリカ合衆国内の柔軟になってきている労働力や、弾力性のある法人部門が魅力があるのではないかと指摘しています。いわゆる、オフシェアリング(工場の作業全体をそっくりそのまま、外国に移転する)が良い方向にいかないケースが増えてきたということですね。
これに対して、アメリカ産を貫いているAmerican Giantというブランドがあります。American GiantのCEOいわく、Made in USAにするということは、30年前に時間を戻したという意味合いではない、と述べています。簡単に言いますと、Made in USAの強み、技術、職人技が消滅していることを懸念しているそうです。
例にGAPをあげているんですが、価格競争に巻き込まれたGAPはほとんどアジアのほうで生産を行なっています。それはリスクがあると。アメリカンカルチャーの損失、サプライチェーンマネジメント、品質管理、需要と供給のバランスなどです。結果、GAPは今過剰供給の状況です(ということは値崩れ起こすのは必然。
じゃあどうするのか?問題の解決策として、以下のように指摘がされています。
【新しいmade in USAの手段】
1、 Made in USAによって価格が上がっても、消費者達は寛大であることをいかに説得するか。品質重視のエリートな消費者になること。安かろう悪かろうを望んでいる限り無理。
2、このエリート達の購入によって、規模の経済が起きて商品の単価が下げることができる。よって高品質、中価格帯にまでおさえられる。
3、American Giantのように予算をフィジカルショップにかけない。基本的にオンラインで販売することによって、広告費、内装費、小売店を維持する間接費、光熱費のコストが必要ない。これでmade in USAは実現可能になる。
4、品質管理が細かくできる。生産する時間を細かく調整できる。
これらの要因によって、18歳から90歳を超える顧客を獲得することができているそうです。American Giantというブランドはよく知らないので、あまりここで推すことはしませんが、made in USAをどこまで実現できるかということに挑戦すると。可処分所得がないとお金を費やすことはできないので、アメリカ経済全体の行方に影響は受けますけどね。
エンジニアードガーメンツの鈴木大器氏が、HUgEの中で、昔のmade in USAのクオリティにはまだ至っていないと述べています。大量生産大量消費からこれからのアメリカ生産についての議論が今後も活発化しそうです。そして、日本も対岸の火事でなく工場の閉鎖は進んでいます。
「ファストファッション」と「格安○○」に勝つための世界レベルの合言葉は「ヘリテージ(遺産)」でしょう。特に成長著しいメンズ市場ではなおのこと。 ライセンス契約だけして、タグを貸すだけの時代は終わったと思います。
【via】The Business of Fashion
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