■誰から影響を受けたか、また、だれに影響を与えたか 繋がりに焦点をあてた画期的な書籍
![]() | もっとも影響力を持つ50人のファッションデザイナー ノエル・パロモ・ロヴィンスキー 朝日真 グラフィック社 2012-09-07 売り上げランキング : 13431 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
大変面白い書籍を見つけたのでご紹介したいです。『もっとも影響力を持つ50人のファッションデザイナー』という題名だけ見てしまうと、いわゆる「ランキングもの」か、と思ってしまうわけですがこれは違います。特に、ランキング形式で紹介していません。過去100年のファッションの歴史において選ばれた50人は、設けられている各章を代表するデザイナー達。そして、デザイナー達の紹介は年表とともに「誰の影響をうけて、誰に影響を与えたか」が説明付きで記されています。これが今までなかった繋がりの要素。
「モード」というファッションの前進、最先端が、衰退気味になっていると言われる今日。モードに関するファッション誌、季刊誌も元気がありません。そんな中、昨年、今年と100年間のファッションを体系的にまとめあげた書籍などが発刊されたり、批評誌が生まれたり新しい風も吹いています。例えば「ウィメンズウェア100年史」だったり、日本のファッション30年が凝縮された「Future Beauty」も展示会の記念として発刊。1つの節目を迎え、この書籍は、インスピレーション元となるデザイナーの関係性が書かれている点が新しいと思うんですね。
アマゾンの紹介では、各デザイナーの代表作については、その作品が当時なぜ傑作となったのかや、現代のデザイナーたちにどのような影響を与えているかを、相互に情報を引用しながら時系列でグラフィカルに詳説しているとともに、年表には、そのデザイナーがだれから影響を受けたか、また、だれに影響を与えたかを明記、としています。
【目次】
| 第1章 ポール・ポワレ 第2章 ココ・シャネル | 第3章 マリアノフォルチュニー 第4章 ピエール・カルダン 第5章 ヴィヴィアン・ウエストウッド 第6章 エルザ・スキャパレリ |
影響を、お互い与え合ったりしているデザイナーもいます。山本耀司⇔川久保玲⇔三宅一生などは、分かりやすい例かと。
そこで、1番影響を与えているのは誰かな?と、辿って名前を数えてみると、「ポール・ポワレ」「エルザ・スキャパレリ」「ココ・シャネル」「クリスチャンディオール」「イヴ・サンローラン」「川久保玲」「山本耀司」が多いのかな。もちろん、昔になるほどインスピレーション元になる回数、可能性が高くなるわけですが、技術、考え、デザインの基本によって重なる。例を出してみます。
◎モードブランドのアイコンであり、ビジネスに長けたデザイナー
| 【影響を与えたデザイナー】 ポール・ポワレ ティエリー・ミュグレー ココ・シャネル イヴ・サンローラン | ⇒ カール・ラガーフェルド ⇒ | 【影響を受けたデザイナー】 マーク・ジェイコブス トムフォード |
セレブリティから愛されるブランドであり、強くてエレガントな女性の存在、さらにブランディングに長けているシャネルのデザイナー、カール・ラガーフェルド。彼が広告キャンペーン写真を自ら撮影するスタイルは、ティエリー・ミュグレーからの影響だそう。また、カール・ラガーフェルド自身がアイコニックな存在になるというブランドの強化は、トムフォードに影響を与えている。さらに、マーク・ジェイコブスのようなストリート、ポップカルチャーがコレクションとして成立する手助けに尽力したという点で影響を与えています。
◎観念論を受け継ぐもの
| 【影響を与えたデザイナー】 アン・ドゥムルメステール⇘⇖ 川久保玲 山本耀司 ジルサンダー クリストバル・バレンシアガ | ⇒マルタンマルジェラ ⇒ ヘルムートラング ⇒ | 【影響を受けたデザイナー】 ミウッチャプラダ トムフォード ニコラ・ゲスキエール アレキサンダー・マックイーン ヴィクターアンドロルフ |
極限まで無駄をそぎ落としたシンプルなシルエット、ミニマリズム、中性的、布と身体の関係性、脱構築主義、プライベートを明かさないという点で、クリストバル・バレンシアガ、川久保玲、山本耀司、ジルサンダーなどは重要。
この流れは、マルタンマルジェラ、ヘルムートラングが年代的に中心となるかもしれません。ヘルムートラングは、マルタンマルジェラのように、人前にあまり姿を見せないデザイナーでした。また、両者とも現在ファッションデザイナーではなく、芸術活動をしています。
いかがだったでしょうか?より詳しいところはご自分でご確認してみてください。面白い発見がありますよ。
川久保玲氏の自立した女性デザイナー像や、世の固定観念を覆す提案は、エルザ・スキャパレリの影響だったり、川久保玲氏が重要視している反抗するエネルギーはパンクでも表現されていることから、ヴィヴィアン・ウエストウッドの初期作品の影響がコムデギャルソンにあるという見方をしている点など、あらゆる方向からインスピレーションを得る、与えるの関係が書かれた本は、あまりないと思います。今年の見っけもんならぬ見っけ本でした。モードが衰退している、というのは、繋がりを見ていかないと表層を見ているだけになるかもしれません。懐古趣味、懐古主義的な考えが「正義」「王道」となるならば、「外道」と呼ばれても「モード」の存在は、やっぱり面白いなと、読みながら思いました。
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