■加工ものよりも生デニムで自分なりの経年変化を楽しみたいという回帰に
アメカジの流れがまだある今日、さらにクラシックな方向に傾き、加工ものより生デニムで自分の味を出す、経年変化を楽しもうとするものが、アメカジ系の雑誌で目立ちます。2000年代初頭は、モードブランドなどの加工ジーンズが流行っておりましたが、その反動とも言えるかも。
Elastic: 隣のデニムは青いシリーズも楽しませて読ませてもらっているんですが、そもそもは、プレーンな生デニムから自分のものにすることが楽しい、というある種の懐古趣味が再燃しているのかなと思う次第。
実際、生デニムのニュースについて取り扱っているサイトRawrDenim.comも話題になっていたりして再燃なのかな?なんて思っています。
そこで、生デニムとは?近い存在でドライデニムもあるけどなんなの?ジーンズ大国アメリカ人でも、実は答えられる人はあまりいないそう。それをhighsnobiety.comが取り上げているので、こちらで加筆修正させて取り上げたいと思います。
生デニムがドライデニムと言われる理由
Raw denim is denim that has been unwashed, untreated, and virtually untouched to the extent that it remains in its pure form.
生デニムはノンウォッシュ。つまり、洗浄過程を完全にスルーしてしまうこと。だから「乾燥している」という意味でドライデニムとも言われます。糊がついたままの生のまま。ここが、ややこしい表現なんですよね。僕もよく、どちらどちらで・・・みたいなことお恥ずかしいですがあります(汗)。
結論を言うと、「リジッドデニム」「ノンウォッシュデニム」「生デニム」「ドライデニム」は基本的に同じ意味です。 洗いやダメージ加工を一切施さずインディゴ(染料)本来の風合いを楽しむ。ただし、100%コットンであること。そして、原料となるコットンはアメリカ、ジンバブエ、日本産に限られること、というのはRawrDenim.comの定義。
昨今、伸縮性に富んだエラスタンを2-3%混紡する場合がありますが、それはなしということなんでしょうね。
で、その生デニムをうまく経年変化させていくのに、日本生産のジーンズは打って付けなわけです。そう主張するのは藍染の技術がジーンズ生産と相性抜群だから。
ジーンズの聖地岡山県倉敷市児島、広島県福山市も全ては藍染生デニム
デニム生地、ジーンズにたいして、世界一クレイジー(褒め言葉)だと言われている国、日本。国内のジーンズ生産は、そのほとんどが岡山県倉敷市児島と広島県福山市カイハラ社となります。ちなみに、広島県福山市には坂本デニムという大量生産をしない手作業を基本としています。一部機械も使用することになりますが、基本的に備後絣という広島県福山市で昔から製造されている絣です。
職人達は、ジーンズづくりは細部に宿るというような哲学を持って、今日も世界水準のジーンズ、デニム生地づくりに奮闘しています。それは、エディ・スリマンが手がけるサンローランのジーンズ、シャネル、トムフォードからリーバイス、Lee、ボブソン、ポールスミスジーンズ、ディーゼル、ユニクロなどなど顧客リストは有名ブランドが名を連ねています。
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日本のジーンズの歴史については、上の日本ジーンズ物語をオススメしますが、基本的に岡山県倉敷市児島のことが多い印象ですね。岡山の児島でジーンズが誕生し発展したのはどうしてなのか?ということから膨大な資料を読み解き、桃太郎ジーンズの社長のインタビューと取材を重ねて1冊の本にまとめたもの。
『日本ジーンズ物語』と書きながら、実はバリバリのマーケティング本です。リーバイスのケーススタディといえば、ビジネススクールの教材として有名ですが、その日本版と言えるでしょう。どうして岡山県倉敷市児島と、広島県福山市の2代拠点がジーンズの大拠点となれたか。
本記事では、藍染の部分に焦点を当てて引用させて頂こうと思います。日本のジーンズの黎明期をつくったのは、ビッグジョンであることは間違いありません。その後、ジャパンブルーグループの桃太郎ジーンズ、藍布屋、キャピタルや、所謂カイハラ製ブランドデニムなど、プレミアムジーンズが生まれるわけです。世界からの熱い注目を浴びることに。
この岡山県倉敷市児島と広島県福山市を取り巻く状況と、高品質のジーンズが生まれたのには、昔から綿花の栽培の木綿製品の伝統があったことと、藍染の伝統的な技術が備わっていたことがあげられます。
デニムの藍染(インディゴブルー)は平安時代から
日本の藍染、ジーンズの元祖のアメリカでは、インディゴブルーですが、この技術が入り藍染品が生産されているのは西暦607年あたりからとか。
突っ込まれる前に一応言っておくのは、今日の藍染とインディゴは似て非なるものということ。後で説明しますが、アメリカから来たインディゴは化学薬品を使用しているものを指すのが多いのに対し、藍染は基本的に「すくも」という天然素材を発酵させて使います。ここが大事。古来より、藍染は大名が着用した熨斗目や裃、武将が鎧の下に着た藍肌着、農作業時のもんぺ、夏の夜の蚊帳、冬の夜は布団布など藍染は生活に密着し必要不可欠な物でありました。 藍染めが庶民に普及したのは江戸時代のはじめ頃。野良着などです。
一方、アメリカでも高価で天然にこだわるジーンズは、天然インディゴを用いて作っていますし、それは、植物の葉の絞り汁で糸を染めていく、ということは同じ。
ともあれ、以上の特異な歴史を持つ日本の藍染という文化は、世界でも改めて注目されているようです。その要素となるのが、一番手間のかかる手作業による藍染。1893年のカイハラから始まっている備後絣からなる絣織り。ここから藍染が世界でヒットしたわけで、本記事が日本からの影響だということを指摘している部分です。以下の動画をご覧ください。
桃太郎ジーンズの藍染(手染め)
2000ドルするという、桃太郎ジーンズのスペシャル版は、Indigofera tinctoriaという真インディゴのプラント生成した染料を利用して着物織機だけでつくる場合もあり、このクレイジーさが、アメリカ人もおどろ木ももの木さんしょの木なわけです。ちなみに、桃太郎ジーンズを持つジャパンブルーグループはグッチやルイヴィトンのジーンズも生産しています。
続いて、藍染のさらに根本である「すくも(藍玉ともいい、藍科植物の使用や発酵の状態)」です。
ビズビムの藍染(手染め)徳島
徳島産の「すくも」を原料にして藍染する日本古来の手法は、今日あまりないそうです。
こうして見てきて、中国地方、四国の藍染の伝統が、1955年以降の日本人のアメカジへの憧れとつながったわけです。
岡山県倉敷市児島では、生地生産の街。110年続いている倉敷紡績(クラボウ)が、1967年創立したビッグジョンと共同したことが、今の岡山県の全ての始まり。米国から流れてくるジーンズを参考に、ビッグジョンは丈夫な作業着の縫製から始めたけど、当時の米国産デニム生地が安定しないという問題がありました。というわけで、1974年クラボウと「KD-8」を開発、初の国産デニムが誕生しここから伝説が始まります。「藍染技術」がジーンズ生産の重要な部分となった瞬間。
以下はカイハラ社の動画ですが、独自開発のロープ染色機について。手作業ではなく、機械を使った生産でもクオリティーを落とさないことに成功してきました。
アメリカから入ってきたジーンズを、日本の伝統と新結合(イノベーション)を起こすことで生まれたのが、生デニム。岡山県倉敷市児島、広島福山市、徳島県の資源ベース、歴史的文化とも言える藍染がアメリカのインディゴに勝る部分があるということは、加工ジーンズから生デニムに戻った時と思える今、再注目してみても面白いのではないかなと思っております。
highsnobiety.com/2012/11/16では、最後にアメリカンジーンズへのクレイジーまでのこだわった研鑽と日本独自の生産が、世界で最もジーンズの生産知識を得るまでに至ったと結論付けています。その力は本国米国をしばらく黙らせたほど。世界のジーンズ市場には、「日本製」という商品がじわじわと染みこんでいくほど量が増えたそうです。
これは、なぜ日本はアメカジをカスタマイズすることに長けているかとという議論と同じ面がありますね。。
最後に、生デニムとは「白紙状態」のことであり、穿く人がその白紙に自分史のごとく歴史を刻んでいくとうまい表現が書かれていました。経年変化はその人の日記のように皆違います。これが生デニムの楽しさなのでしょう。 僕は、生も加工も両方ですが、新しく日本製のジーンズを買って育ててみようかなと、書きながら思ったところ。とりあえず児島と福山市は行ってみたいと思いました。
【参考商品】
リーバイス505 メイドインジャパン クラボウ社製セルビッジデニム
【via】
RawrDenim.com highsnobiety.com highsnobiety2.com
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お、行かれたんですね!(^_^)