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2012年12月19日

神格化されるコムデギャルソンをdisる『相対性コムデギャルソン論』

■有識者のインタビューと論考集

相対性コム デ ギャルソン論 ─なぜ私たちはコム デ ギャルソンを語るのか 相対性コム デ ギャルソン論 ─なぜ私たちはコム デ ギャルソンを語るのか
五十嵐太郎 浅子佳英 桑原茂一 柳本浩市 千葉雅也 菊田琢也 平芳裕子 小澤京子 坂牛卓 入江徹 森永邦彦 松田達 井伊あかり 永江朗 成実弘至 井上雅人 長谷川祐子 藤原徹平 本間直樹 木ノ下智恵子

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建築家から、批評家、哲学科、社会学、文化社会学、メディア論、選曲家、コミュニケーション論、キュレーターなどファッションと直接関係のない人達が、あえて私的コムデギャルソン論を展開。といっても、森永邦彦氏はアンリアレイジのデザイナーですが、あくまで論考です。でも、難しい言葉もあまりなく実は読みやすいです。まとめたのは、『ファッションは語りはじめた──現代日本のファッション批評』の西谷真理子氏です。




【目次】

輪郭的問題提起的コムデギャルソンとは何か?
1、座談会:設計、コムデギャルソン
2、アフターコムデギャルソン
3、コムデギャルソンとセゾン文化
4、ストリートにおけるコムデギャルソン
5、自由・平等・コムデギャルソン


分析的領域横断的:少女・少年・性・カワイイ
6、対談:少女性から思考する建築とファッション
7、性差を突きつける/突き破る
8、装飾の排除から、過剰な装飾へ
9、インタビュー
10、COMME des GARCONS、あるいは衣服という表面においていかに多用な性を上演しうるか
思考実験的コムデギャルソンの先を読む
11、生の危うさ
12、コムデギャルソン運動体分析試論

体験的実感的個人的体験からのコムデギャルソン論

13、対談:私達のコムデギャルソン論
14、私はコムデギャルソンによって選曲家という仕事に出会えた


データ的歴史的コムデギャルソンを歴史的に検証するためのツール
16、COMME des GARCONS以前のコムデギャルソン




相対性というだけあって、「コムデギャルソンとは?」という論考、インタビューでも皆いろいろなんですね。皆が語れる、もっと突っ込むと叩くことも称賛することもできる存在。僕は、それが「コムデギャルソンなんだろう」というズルい答えを持っております(笑)。いろんな角度、加減で書かれているものが編集されているため詳細は読んでもらいたいのですが、あえて1つだけ辛口批判している千葉雅也氏の対談を取り上げます(だって少ないし)。ネタとして興味が沸く内容。

 

 

■コムデギャルソンの神格化にちょっと待った

哲学、批評家千葉雅也さんと菊田琢也さんの対談。ここでは、コムデギャルソンというブランドの神格化についてちょっと待った、ということ。詳しく言うと、コムデギャルソンのメンズライン。コムデギャルソンオムプリュスからスタートするですけど。

 
もともと、30代のお2人の青春期、コムデギャルソンを買う、という経験はRAGTAGで古着として買う商品。理由は、古着じゃないと高くて手が出ないから。あるいは、コムデギャルソンを着ているかのようなコーディネート。同時であればシャツをひっくり返して着たり、柄物×柄物、コートの上にジャケットといったレイヤード。
このような経験があることから、そんなに神格化する感じは違うんじゃない?という対談です。対談にあたり、千葉雅也さんは「僕としては、今日は正直に言うとギャルソンをある意味disりたいなと・・・」と話しています。これは興味深い(笑)。オラワクワクしてきたぞ。

 

◎コムデギャルソンは神?

30代の千葉雅也氏いわく、もっと上の世代の評論を見ているとものすごく評価が高いけど、そんないつもまでも続いているのかって話をしています。

今や神話的なギャルソンって一回以上終わっていると思うんです。だけどビジネス展開のうまさなんか考慮するなら、国外的には「日本の宝」みたいに言って自慢してしまえばいいと思うんですね、ヴィトンとかに対抗するためのポリティクスとして。だけど、それはそれとして、本気の批評としてはね、もっと辛く言ってもいいんじゃないかという気がするんですね。

一回以上終わっている、というのが批評家ならではの表現なんでしょうかね?面白い。オワコン化してるという意味ですね、わかります、というと総攻撃を食らうので注意が必要です。

◎コムデギャルソンは女の味方?

千葉雅也氏いわく、レディースは面白いけどメンズの良さがわからないとはっきり言っています。男だってレディースみたいにもっと飛んでたっていいじゃない?ということ。

千葉雅也:なんで僕がギャルソンにそれほど興味ないかっていうと、メンズがつまらないからなんだ。で、レディースはとても面白いわけですよ。今までギャルソンが素晴らしいって言っていた人って女性の語り手が多かったと思うんです。それは分かりますよ。ギャルソンは女の味方だから、基本的に。

鷲田清一氏がギャルソンを評価する男性の語り手だけど、対象はレディース。ギャルソンのメンズライン論なるものがない。これが千葉雅也氏の意見。確かに、一冊通じて「性差」のテーマがあることは、上述の通りですが、ウィメンズが主ですね。

◎川久保玲は、女性だから男性の身体に踏み込んでいない

話はもっと辛口になっていきます。要するに、川久保玲が女性だから男性の身体を希薄なものとして考える、身体を持っている女性(生理もあれば子供を生む)と身体を持っていない男性という二項対立が典型的にある、ということを指摘しています。その辺、ゲイのデザイナーは自分の身体が男性だから素朴にセクシーな男性を表現する。それが、コムデギャルソンにはないという。じゃあどうなるかというと、ヤンキーファッションの亜流に行き着くというんだから、これは怖い(汗)。サルエルパンツに腰穿きェ。

◎2ch的発想「ギャルソン=嫌儲ファッション?」

モテ服としてギャルソンをどう思うか?という質問に千葉雅也氏吼える。ファンたちにも噛み付く。

モテをバカにしている感じじゃないですか、方向性としては。モテに対して上から目線で、モテとか言っているやつらかっこ悪い、みたいな感じでしょ。あとは、昨日2chでギャルソンについて検索していて出てきたのが「けんもう」っていう言葉(儲けを嫌う)。「嫌儲ファッション」って言われていて、要するにお金儲けすることを馬鹿にするタイプの種族の人たちが好むものだっていうんです。ある種の清貧志向だっていうことでしょう。

さあ、とうとう2chが出てきました。千葉雅也氏がファ板に出没しているということですね。ファ板の皆さん、千葉雅也氏はこう思っていますぜ、とチクってみる(笑)。


◎コムデギャルソン=「少年のように」 いや、おぼっちゃまくんは?的な話

話はどんどん下世話になっていきますが、自分に正直です。コムデギャルソンという言葉は「少年のように」という意味です。この少年て・・・誰よ?という話。

90年代のコムデギャルソンは、いしだ壱成のようなフェミ男(フェミニンな男性)に乗っかってきて可愛らしさに行くけど、ゼロ世代はそういう中性的なかつてのフェミ男じゃなくてもっと本当に「受け」の男っていうものが出現している、と千葉雅也氏は話しています。純粋無垢な美少年、映画「ベニスに死す」アッーなわけです。これは、少年というものが美化され過ぎだろ、潔癖だろ、と言っています。

すごく簡単に言えば、男の子ってもっと下品だと思うわけ。小林よしのりの「おぼっちゃまくん」みたなものなわけですよ、「少年」っていうのは(笑)。そういう「少年」の倒錯性みたいなものがギャルソンでは相当抑圧されていて、耐え難いんですよ。

◎コムデギャルソンとコムサデモード

よくファイブフォックスのコムサデモードは、コムデギャルソンのパクリだという説がありますが、本書でも書かれています。でも、批評家の千葉雅也氏の視点はやっぱり斜め上(笑)。コムサデモードはコムデギャルソンの後追いであり、ギャルソンファンからしたら全く同じではない、というのが当然。でも、ギャルソンの尖った部分が少しずつ失われてくると、分身関係に摩り替わって来てしまう点を指摘しています。ギャルソンにコピーする「隙」があるというか。

ファッションにつきもののいかがわしさと、通俗化と前衛性のダイナミクスを考える時に、批評的に面白いのは、むしろコムサデモードとファイブフォックスだというふうに僕は考えるんです。これとコムデギャルソンのオリジナリティとの拮抗を考えねばならんと思っているのです。
コムサデモードって、肯定的にとれば、これこそがモードだ、これこそがおしゃれだ、流行りだ、みたいな意味なのかもしれない。でも、フランス語の「COMME CA」のニュアンスから言うと、モードなんて「しょせんこんなもんでしょ」っていう意味にも見える。ならば、モードに対する強烈なアイロニーなのかもしれない。

COMME CA DU MODEという言葉自体造語みたいな感じで、本当は正しくないそうなんですが、千葉雅也氏の見解としてはそれも計算済みのパロディ。ギャルソンのアバンギャルドといわれている要素を消すために出てきたブランドであって、前衛なんてこんなもんさ「COMME CA」っていう形にしてしまったと考察。

辛辣な部分もありますが、興味深いですね。この本の「相対性」たる所以。いろんな意見があります。僕の中では「嫌儲ファッション」の部分がかなり興味深くて、アンチマーケティングを戦略的にマーケティング管理しているのが川久保玲氏であり、天才だと思っています。前から最強のビジネスウーマンだとは書いていることですが。
コムデギャルソンが本当に嫌儲だ!と思われているのなら、川久保玲の勝ちです。これが僕の正直な印象ですね。
だって、コムデギャルソンをプロパーで買うの高いですもの。セールで買いますよ、僕だって。でも、コムデギャルソンは好きか?と言われば好きです。ちなみに、ジュンヤマンのほうが好きなんですけどね(笑)。あえて言っておくと、千葉雅也氏は、わざと本書で悪者を演じていますね。この内容がないと、「相対性」が危うくなります。そういう意味で、大変おもしろかったです。

千葉雅也氏にとっての「かっこいい」とはという記事もありますので、合わせて読んでみてください。

ギャル男を哲学的に説明しようとする氏の思考は、哲学から入るので俯瞰的。以下の主張が、コムデギャルソンオムプリュスにはないというメタファー。

ファッションの革命、文明化=野性化。一線を侵すかどうかのエロティシズムは、羊たちのエロティシズムでしかない。来るべきエロティシズムは、複数の文脈のあいだをジグザグに移動していく「多線のエロティシズム」である。既製(=制)服を、規範的でない複数の「別のしかた」によって異化する。かっこよくなること、それは、法をめぐる一線のトラウマをどうでもよくしていくことであるだろう。それは、自らの表面に、のみならず骨肉にも脳にも、喜ばしく多線の傷を、異なる波打ち際を、乱走させることであるだろう。


かっこいいとはどういうことか? 第一回 二種の着くずし 千葉雅也(哲学/表象文化論、批評家) | ISETAN INTO THE FUTURE

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posted by No.9 at 22:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | 議論 | 更新情報をチェックする
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