■集計したアンケートからポジショニングマップを作ってみた
以前、みなさんにご協力いただいたファッションブランドのイメージ調査。こちらで統計分析をかけまして、結果が出たのでご紹介したいと思います。いつも、統計分析の中身を説明をしつつ進めていくのですが、やはりあまり面白くもないと思うので結果だけ先に出して、分析については最低限の説明にしておきます。あくまでみなさんに興味を持ってもらえれば嬉しいです。
使用したブランドは、ユニクロ、H&M、GAP、無印良品、コムデギャルソン(全般)、ポール・スミス、ステューシー、アベイシングエイプ、ビズビム、N.ハリウッド、wjk(AKMも含む)、メゾンマルタンマルジェラ、エルメネジルド・ゼニア、バーバリー、トム・フォード、ルイヴィトン、エルメス、アレキサンダー・マックイーン、プラダ、トム・ブラウン、ラルフローレン、リーバイス。一応、ファストファッション、裏原ストリート系、マルイ系、モード、クラシックを一緒にしました。以下、分析から出力されたポジショニングマップ(知覚マップ)です。
ファッションブランドのポジショニングマップ(知覚マップ)
これは、因子分析という統計分析で出したもので、私が適当に布置したわけではありません。「好きなブランド」、「購入する意図がある」「購入する」という思いがある場合、このようにブランドが散らばっています。X軸が「絆」という因子、Y軸が「品質」という因子です。これは後で説明しますが、要因のような意味合いです。使用しているファッションブランドとポジションについては以下の通りとなっています。
ブランド | 因子 | 因子 |
X軸:絆 | Y軸:品質 | |
ユニクロ | 0.426569 | -1.17873 |
H&M | 0.974077 | -2.15659 |
GAP | 0.732201 | -1.65186 |
無印良品 | 0.919179 | -1.38706 |
コムデギャルソン | 0.081112 | 0.257889 |
ポールスミス | -0.14933 | -0.10125 |
ステューシー | -0.63605 | -0.60302 |
アベイシングエイプ | -1.27298 | -0.19608 |
ビズビム | -0.21808 | 0.096682 |
N.ハリウッド | 0.254561 | -0.23164 |
wjk | -0.25677 | -0.03742 |
マルタンマルジェラ | 0.64161 | 0.226994 |
エルメネジルドゼニア | -0.68735 | 1.001372 |
バーバリー | -0.08077 | 0.502063 |
トムフォード | -0.43905 | 1.183401 |
ルイヴィトン | -0.81007 | 1.393397 |
エルメス | -0.61591 | 1.53367 |
アレキサンダーマックイーン | 0.483104 | 0.371027 |
プラダ | -0.09455 | 0.936571 |
トムブラウン | 0.043929 | 0.658861 |
ラルフローレン | 0.342604 | -0.05901 |
リーバイス | 0.361978 | -0.55926 |
簡単な見解と解説を書いていきたいと思います。
1、品質で別れるブランド群
ルイヴィトン、エルメス、トムフォード、エルメネジルドゼニア、プラダが、「品質」において高いというイメージを持っています。そして、ユニクロ、GAP、無印良品、H&Mが高くない結果になっています。ちょうど、ファストファッションとしてかたまっていますね。絆が非常に強そうなアベイシングエイプが低い値なのが不思議。逆にH&Mの絆が高い値なんですよね。
2、因子(分析から出たデータの背景にある潜在変数)の解釈
因子というのは、先ほどのも述べましたが「要因」のことを意味しています。専門的に言えば、観測変数の背景にある潜在変数とか、「重みづけ」なんて言い方をしますが、ここではふつうに要因でかまいません。因子分析の因子負荷量(解釈に使うための数値)からX軸を(ブランドとの)絆、Y軸を品質としました。あくまで被験者のイメージなのが注意点ですね。
3、クラスターで分類
因子分析を行うと、因子得点というものをゲットできるのでそれを用いてクラスター分析(分類する分析)を行いました。4つに分かれます。
クラスター1【ストリート層】基本的に裏原系を好んでいる。
クラスター2【トレンド重視層】モード、ドメブラ、その時の流行りものを選ぶ
クラスター3【高級志向層】品質と高級感を好む層
クラスター4【価格重視慎重層】ファストファッションだけではないが価格やセールは大事
4、購入と選好ベクトルを加えたポジショニングマップ
上記のグラフに選好、購入の矢印(ベクトル)を加えたものをご紹介。これは選好ベクトルといって、ちゃんと角度も統計分析からの結果で得られたものなんです。このベクトル上にあるブランドは「選好」「購入」に至る可能性が高いものということです。だとすると、コムデギャルソン、アレキサンダー・マックイーン、マルタンマルジェラは、売れ筋なのかな?ということが予想できます。
しかし、「選好」「購入」至る圧倒的な存在がこのポジショニングマップには存在していません。アパレル産業はダメだ、なんて声を聞きますが、まだポジションは空いていますね。
5、分析の簡単な中身
分析の手続き。今回のデータ分析には256人の方に参加して頂き、うち119人が有効回答数となりました。データは、プーリング法という方法でためていき、分析を行いました。
質問は全部で、18問。18問に、ファッションブランドに対するイメージ「自分とのつながり」「トレンド」「品質」「価格」「デザイン性」という要因のどれかが抽出されるのではないか?という仮説を立てて作成しました。質問は以下です。質問票とイメージの仮設は、経済産業省や、日本アパレル工業技術研究所のものを参考にしてつくりました。
自分とのつながり
1、自分に似合うと思いますか?
2、自分の趣味、感覚にあっていますか?
3、ブランドとの間に強いつながりを感じますか?
トレンド
4、今流行っていると思いますか?
5、異性にモテると思いますか?
6、芸能人の衣装、ファッション誌の印象がありますか?
品質
7、素材、生地は良いと思いますか?
8、高級感を感じますか?
9、縫製、仕立てなどディテールは良いと思いますか?
価格
10、価格に満足していますか?
11、ネットやアウトレットのセールを待って買いたいと思いますか?
12、コストパフォーマンスに優れていると思いますか?
デザイン性
13、デザインは良いと思いますか?
14、ブランドロゴ、タグにインパクトはありますか?
15、ショップの内装、HPにセンスの良さを感じますか?
16、これから買いたいと思いますか? ⇒ 購買意図
17、好きですか? ⇒ 選好
18、商品を買うことがありますか? ⇒ 購買
データの一部
オープンソースの統計ソフトR言語を用いました。
データをもとに因子分析を行い(因子負荷量、共通点、累積寄与率、プロマックス回転)で、因子の抽出を行いました。そして、因子得点の平均値をブランドごとに出して、ポジショニングマップを作りました。また、因子得点はクラスター分析、選好ベクトル分析を行うためにも使用しました。この辺の分析手続きは、書いても良いのですが、あまり需要がないのと、途方もなく長くなるので、今回は出来上がったポジショニングマップのほうをフィーチャーするのみにしたいと思います。論文みたいになってしまうのは、やっぱり面白みに欠けてしまうので。ネタ的に見ていただければ幸いです。
なお、以前ご紹介したメンズファッションのポジショニングマップは、因子分析とは違う多次元尺度構成法という分析で出しているため、根本的に違います。今回は、ポジショニングマップとともに、要因(X軸、Y軸の解釈)を出したかったので、因子分析をしました。多次元尺度構成法だと、分析者の主観で軸を解釈することになりますが、因子分析だと因子負荷量があるので、しぼりこめます。難しい話はこのへんで終わり。
いかがだったでしょうか?もっと他の分析やデータを出していきたいのですが、尺が長くなるのでこのくらいにしておきます。あくまでポジショニングマップをお見せしたかったので。ご協力頂いた皆さんに感謝しつつ、楽しんで見て頂けたら幸いです。
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