■クチュール的な存在とプレタポルテ的な存在は共存できない
裏原系とは、「カジュアルなストリートファッション」「奇抜」「セレブも
着ているような、高価なデザイナーファッション」をまぜたようなスタイルである、
とライブドアニュースでは載っています。
また、最近の裏原系として、Elasticでは藤原ヒロシ氏が絡んでくるいる服が
裏原系の定義に入り、本質はミーハーであり、他者と同一化を求める傾向
があると述べています。だいぶ90年代とは異なるマーケットの捉え方です。
私のとらえる本来の裏原系は、排他的でアンダーグラウンドなスタイル、
一部の人間の中だけが受け入れ、ライフスタイルに優越というプラスの影響を
与えることのできる経験価値だと思っています。
裏原系はジレンマを抱えていると思います。その代表であるアベイシングエイプ
を例にしてみましょう。こういうクチコミで広がったファッションブランドに
マーケティングの考えを入れたくないのですが、あえていれるとしたら、
90年代後半、少量生産で熱狂的なファンを持つストリートファッションの
ニッチ(隙間)的な市場を作りあげていたと思うんです。コレクションブランドでも
まだエディスリマンのいない時代。本当の意味で若者全体を巻き込んだトレンド
もなかったので相当インパクトはあったでしょう。でも、その流れが大きくなって、
キムタクを中心とした芸能人が着だして、ファッション誌、テレビ、音楽関係に
露出しだし、もはやニッチ市場ではなく、裏原市場という大きな市場として拡大し、
後に入ってくる多くの裏原系というブランドが入ってきたために、大量生産
に陥り、一部の熱狂的ファンはアベイシングエイプの方向性にがっかりし
離れていく。多くのミーハーが「あの芸能人も着ているから」みたいな同一化や
イベント頼みのブランドへとシフトしていってしまったと思うんです。
なのでクチュール的(その人だけのための服 あるいは排他的)から
プレタポルテ的(誰でも着れるように作られた既製品)になったんと思うんです。
どちらがいいとはいいませんが、裏原系の原点に帰るなら、クチュール的な
ブランドのポジショニングのほうが、マーケティング的には息は長いと思います。
買うファンは皆、毎週長蛇の列を乗り越えて、希少価値のあるデザイナーNIGO
のアイテムが手に入るんですから。そのアイテムへの「こだわり」「愛着心」
「忠誠心」は大きいでしょう。でも企業の成長を考えれば、露出して規模を大きく
して売り上げをあげたい→マス化=非ニッチとなるわけです。これでは競合
ブランドが画期的な戦略に出た場合、負けるリスクを背負います。だから
ジレンマなんです。裏原系ブランド一覧だけで、こんなに競合がいるんですよ。
ここで、ライブドアニュースをもとにNIGOと高橋盾が生んだ90年代後半の
裏原系の流れをアベイシングエイプを中心に見ましょう。
14年前の4月、2人の日本人が専門学校を卒業し、23歳という若さで専門知識もほとんどないまま、原宿の静かな裏通りで小さなブティックをオープンさせた。ブティックの名前は「ノーウェア(NOWHERE)」。物件の大きさや立地にぴたりとフィットする店名だ。そのうちの1人、高橋盾(JONIO)は自らが立ち上げた前衛的パンクブランド―Under Coverの商品を店の半分で売り、もう半分は後のインターナショナルスーパーブランド・A BATHING APE(BAPEのトータルディレクターとなるNIGO(長尾智昭)が担当していた。開店当初の数ヶ月、NIGOの売場ではadidasやその他のセレクトインポートグッズが売られていたが、高橋のレーベルの大ブレイクがプレッシャーとなり、NIGOは自分のオリジナルブランドを作って差別化をはかる必要性を感じていた。そこで友人であるグラフィックデザイナー・スケートシングとのブレストによって、映画「猿の惑星」にちなんでゴリラの顔をビジュアルアイコンとした「A BATHING APE IN LUKEWARM WATER」というブランドが生まれた。 |
ライブドアニュースのほうでは、NIGOが何をどうやって売ったかが、勝ち
の要因となったとありますが、私はやはり何を売ったかというのがもでかい
と思います。デザインと仕立ての技術なしでファッション業界で戦っていく
のは無理ですから。あえていうなら、そのアイテムを限定で、知る人ぞ
知る場所で、ひそかに売っている、空間と雰囲気がそのアイテムへの付加価値
を与えたのであり、誰の手にも渡るものであってはいけないということですね。
さて、アベイシングエイプはこの後マス化して、落ち目になります。以下。
NIGOはこの変化を「ブランドの成長・拡大(メジャー化)」と正当化しているが、この新たな方向性は不運なことに彼の全てのブランドイメージを帳消しにしてしまった。以下に挙げるポイントが、このブランドが経た変遷の概略である。 店舗展開―日本では、全国の主要都市ほとんどに(さらには小都市にも)ビジーワークショップ(Busy Work Shop)がある。海外ではニューヨーク、ロンドン、香港、台北にあり、今後はロサンゼルスにも展開していくようだ。以前は、東京の限られた場所にしか店舗はなかったが、今ではBAPEの関連ショップが過剰と言っていいほどオープンしている。美容室の「BAPE CUTS」、喫茶店の「BAPE CAFE!?」、そして子供服「BAPE KIDS」など。しかし、残念ながら、いずれも客はほとんど入っていない。ここまでくると、BAPEの商品を購入しても、その特別感や排他的優越感を得ることはもはやない。 |
排他的なブランドがマス化するとき、ファンはそのブランドに対しての「親近感」
「愛着心」「忠誠心」はなくなるのです。
すごく極端に簡単にいうと、ご自分の彼女あるいは、彼氏が、何人も公認の愛人
を持っていたとしたら、あなたはその恋人に対して「愛」をたもつことができますか?
できないでしょう。アベイシングエイプ設立当時のファンの心はこのような関係に
近かったのではないでしょうか?前述にもありましたが、若者のファッション以上の
ライフスタイルまで入り込むほどのエネルギーをブランドは持っていた。
しかし、NIGO氏本人がそれを知らなかったのかもしれません。
マス化したことでいろんなメディア、広告塔を使って事業全体で売り上げを稼ぐか
排他的あるいはストリートファッション市場の絶対的なニッチの存在として長く
生き続けるか、このどちらかを選ばなければいけないんです。二律背反、両立
は無理です。
だから、結果的にマス化して、メジャーブランドとなったアベイシングエイプは、
裏原系として戦っていては競合ブランドにやられてしまうかも知れません。
だからある意味、アンダーカバーの高橋盾氏のようにコレクションブランド
として打って出るか、何か大きなことをし続けなければなりません。結局、
1度大きくなってしまったブランドは、大きくなり続けるしか生き残ることは
できないのです。でもカフェをつくるのはちょっと多角化しすぎですね。
ブランドイメージを壊します。この辺は別の機会で書きます。
服で勝負してもらいたいと思います。
例えば本格的にテーラードスタイルを打ち出すとか・・・。この辺は、読んで
くださっている皆さんのほうが詳しいでしょう。アベイシングエイプ・・・どうなる
んでしょうね。
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調べごとをしてたらここにたどり着きました。
言葉の使い方で気にあるところはちょっとありますが、その世界以外の人にもわかりやすくよく書けてると思います。これからもがんばってください。